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2020-05-01

若尾 典子(元佛教大学)

「おうちにいましょう」への日本国憲法からのメッセージ

 「おうちにいましょう」と政府が呼びかけている。感染対策だから、おうちにいることができるよう、政府は具体策を実施しなければならない。おうちは食べさせてはくれないから、おうちにいるためには休業補償がすぐに必要である。休業補償は経済対策ではなく、感染対策である。とくに多様な働き方を推進してきたのは政府であり、さまざまな仕事をもつ人に対応する補償が求められる。また、おうちがない人には、すぐに住宅保障が必要である。感染対策が終わっても、おうちがないことにかわりはないから、長期的な住宅保障が必要だ。おうちがあっても安全に暮らせない人にも、相談だけではなく、すぐに住宅提供ができる体制が必要である。そして、おうちで一人暮らしが困難な人には、ケアを提供する人が保障されなければならない。ケアを必要とする人は病院や介護施設と同じように、おうちにもいる。そしていま、おうちには子どもたちがいっぱいで、ケアの負担はもっぱら女性にかかっている。大事なことは「身体の距離」であり「社会の距離」ではない。おうちは、それだけでは「いのちと暮らし」を守ることはできない。だから、どんなおうちにいても、一人ひとりが気持ちよく生活できることは私たちの権利だと、憲法24条がいっている。そのためには、憲法25条が生活保障を、26条が教育保障を、そして27条は労働保障を、政府の仕事にしている。「わたしたちの命と暮らし」を守ることが政府の仕事であることは、いつものことなのだ。ただ、感染対策として、すぐにやることが求められているだけである。いのちと暮らしをかけているのは、わたしたちであり、おうちにいるための政策をすぐに実行することが、政府の仕事であることを、あらためて日本国憲法は示している。

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