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2020-05-01

石村 修(専修大学名誉教授)

2020年 憲法記念日のメッセージ

 新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中に蔓延している状態にあって、73回目の日本国憲法記念日を迎えました。人々は、生命の危険がある見えないウイルスの存在に対処する国家や自治体、医療機関の対応に、一層に注目しています。国家や自治体の在り方を定めているのは憲法であることを想起しますと、この時期に憲法の役割を思い出すことも必要でしょう。
 公権力が危険を予測して、危険に至らない段階でのリスクを事前に配慮することが求められるのは、自然災害も医療災害も同様であって、毅然とリスクに対応する姿勢に国民は同感を抱き、進んでこれに協力することになるはずです。残念ながら、ドイツや韓国で示された政府のリスク対応措置と、安倍政権のそれとは大きく異なるようです。自治体では政府の愚鈍な対応に痺れを切らし、先行的な対応するところも出てきました。
 今、行うべきは、政府の検査体制と罹患者の生命を優先させる対応をもって、国民を安心させることです。新法による緊急事態宣言は、法的には弱いものですが、政府は憲法規範の要請を緊急事態宣言になぞってリスク対応措置を実質化させる行動をすべきでしょう。国民が被った経済的な負担に対しては、損失補償ないし国家賠償の考え方で補償を確実に実行すべきことです。要は、憲法13条(生きる権利)と17・29条(経済的に生きる)の精神を想起すべきときが来ています。

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