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2018-11-25

2018.10のCSISレポート(邦訳)

More Important Than Ever | Center for Strategic and International Studies

以前にもましてより重要な関係を–21世紀の米日同盟を再び新しくする

日本は、世界のもっとも重要な部分において、もっとも能力のある米国の同盟国である。それ に加えて、米日の諸利益は今日の主要な課題に関して親密な同盟関係にある。しかし、この同盟は大きな緊張や危険に直面している。以前の時代とは対照的に、両国において同盟関係に反対す る大きな声は見られないが、それぞれの同盟国が他方の前進を一層要求する必要性が依然として 存在している。ワシントンの関係者の中には、日本のより積極的な外交・安全保障政策が日本に おける経済成⻑とアジアにおける安全保障に対する増大する課題に相応したものになっているどうかを問題にする者もいる。米国と日本は、平和と安全保障に対する脅威の増大に備えて同盟 を固めるために、ともに働かなければならない。

我々の同盟の強みは明白であり、それゆえ、両国における両当事者の関係者は正当な評価を得なければならない。過去5年間で、(米日の)同盟国は新たな防衛ガイドラインに結論を出し、 同盟調整メカニズムを創設し、SM-3 ブロックIIA 弾頭ミサイル迎撃弾を合同で開発した。日本は国内の安全保障立法を改装し、集団的自衛権の行使を可能にし、秘密保護条項を改善し、よ り積極的なグローバル関与戦略を採用し、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の擁護を含めて、インド太平洋地域においてさらに目に見える指導者の役割を引き受け た。その間に、米国はアジアへのリバランスにコミットし、自由で開かれたインド太平洋を追求してきた。米国と日本の国家のリーダーは親密な個人的絆を享受し、それは関係性の安定装置として役立っている。

それにもかかわらず、同盟の将来は21世紀の他の時期よりも、今日はあまり明白でない。米国と日本の同盟は内外の挑戦に悩まされている。ドナルド・トランプ大統領の「アメリカ第一」の 取引姿勢、保護主義的政策、米国の前進的な軍事的プレゼンスの価値への疑問は、同盟にとって深刻なリスクとなっている。30年前と同じように貿易問題が同盟を脅かしてよい政治的・経済的理由はない。米国と日本が20世紀の関税を議論している間に、特に中国と北朝鮮からの、地域の 安全保障と繁栄に対する21世紀の脅威は成⻑している。

アジアにおいて挑戦が増大するときに、じっと立ち止まっていることは遅れをとる要因となる。 同盟国はともに前進し、アジアでまた世界中で、より大きな指導者の役割を受け入れなければならない。結局のところ、米国は強い自信に満ちた日本を必要としている。そして日本は関わり合いをもった建設的な米国を必要としている。現在から2030年までの野心的なしかし達成可能な アジェンダを提起することによって、このレポートが米日同盟を強化する助けとなることを、 我々は望んでいる。

 同盟の好機と挑戦


米日同盟はアメリカと日本の戦略だけでなく、北東アジア、より広いインド洋太平洋、さらには北大⻄洋条約機構、つまり全体としての国際システムの安全と繁栄の要となっている。同盟の成功は、4つの永続的な強みを活かした共通の利益を守るというコミットメントによっている。

第1に、同盟国は平和で繁栄した地域秩序および国際秩序の構築において、主導的な役割を果たした。戦争の灰から出現した米国と日本は、ともにより有益で耐久性のある戦後秩序を構築し、それは現在80年目に入っている。

第2に、同盟国は、人権の保護、⺠主主義、自由市場、法の支配に関する価値を共有している。これらの基本的な価値は国内外で標識として役立ち、我々の国内システムを強化し、世界中から 友人を魅了している。

第3に、米国と日本は世界最大でもっとも革新的な(innovative)経済の2つである。同盟は3 つの最大国経済のうちの2つであり、世界の国内総生産の約30%を占めている。

第4に、同盟は特に北東アジアにおいて実質的な軍事力を保有している。何十年にもわたって、 合衆国と日本は同盟国の共通の利益に対する一連の脅威に対して、抑止し防衛するための堅固な 能力と関係を築いてきた。

これらの永続する強みは、米国と日本の間の協力を拡大するための強固な基盤を提供している。 それにもかかわらず、同盟は上記の4つの強みのそれぞれを弱体化させる恐れのある幾つかの重 大な挑戦にも直面している。

第1に、米国と日本が創造することを助けた国際秩序が危機に瀕している。両国の外部では、 権威主義的資本主義がオルタナティブなガバナンス・モデルとして広がっている。内部では、米 国の指導者は同盟の価値と既存の世界秩序に疑問を投げかけている。

第2に、我々の指導者たちは、我々の共有価値に関してもはや声を揃えて話すことはない。トランプ政権の同盟国に対する取引的なアプローチと権威主義リーダーへの無条件の関与は、人権、 ⺠主主義、自由市場と貿易、法の支配といった、共有価値についての米国の支援の認識を損な うものとなってきている。

第3に、保護主義の脅威が高まっている。中国やその他の国々は、アメリカと日本のイノべー ションを利用する不公正な経済慣行に頼っている。その一方で、トランプ大統領は、有害な保護 主義政策を取り入れるためにポピュリスト的感情を利用している。トランプ政権は戦後史におけ るもっとも商業主義者的な(most mercantilist)米国政府であるが、日本はその経済を自由化す ることに依然として歩を進めることができよう。

第4に、軍事的競争が同盟の軍事的迫力を狭めている。中国が特に軍事的現代化を急速に進め ており、「灰色地帯」の作戦を採用するようになってきた。それは、中国と米国との間のギャッ プを減少させ、侵略を抑止し敗北させる能力の再評価を同盟国に強いている。
 これらは決して打ち勝つことのできない挑戦ではないが、米国と日本による、より明確に発言 されるビジョンとより調整された政策対応を求めている。これは、政治的および経済的アリー ナの両方において真実であり、それぞれが同盟の提唱者にとっての挑戦を提示している。

 変化する政治的現実


米日関係は、両国における国内政治によって不安定になっている。安倍首相の職への復帰は同盟の運営を強固にしたが、より最近の米国指導者の移行は、日本の多くの者を混乱させた。ト ランプ大統領の選出は日本にとって試験期間を示唆した。トランプ政権は同盟負担のシェアとい う古いテーマを思い出させ、大統領が経済的弱点の源泉として見なしている米国の貿易赤字に焦 点を当てた。それに加えて、トランプ大統領は、アジアにおける米国の同盟国は自らを防御するためにより以上のことをすべきだと示唆し、また前方展開されている米軍の価値を公然と問題に することによって、新聞の見出しを飾った。

これらの挑戦にもかかわらず、両国関係は前進する勢いを維持している。安倍首相は早急に大 統領に選出されたトランプを訪問し、ニューヨークのトランプタワーで最初にトランプに会い、 その後続いて訪問中にワシントンとマー・ア・ラゴへ行った。安倍・トランプ関係は安全保障 問題に関して頻繁なコミュニケーションをとることを許し、それは貿易に関する当初の心配のい くつかを緩和した。北朝鮮との交渉と両国間貿易関係に関する討議は、過去1年半の多くの期間、 同盟国の注目する焦点となってきた。

2017年の平壌の加速化されたミサイルの発射は、米国が「100%」日本の後ろにいることを、トランプ大統領が日本に保障する機会を与えた。安倍とトランプは「最大の圧力」戦略 を支持し、北朝鮮に対する国連の制裁のための国際的な支持を作り上げるのに熱心に働いた。 その一方で、日本は弾道ミサイル防衛における大きな新しい投資を公表した。より広い地域 的な安全保障の論点について、トランプ政権は東京の「自由で開かれたインド太平洋」概念を採用し、拡大した。

貿易その他の経済問題は、しかしながらより問題を抱えているいる。環太平洋パートナーシッ プ(TPP))からのトランプ大統領の撤退は、日本に対して打撃だった。当初マイク・ペンス副大統領と麻生太郎副首相のもとで組織された自由貿易協定に関する二国間協議は、同盟国の経済的アプローチにおける鋭い相違を明らかにした。トランプ政権の国家安全保障を理由にした 鉄鋼とアルミニウムへの関税の賦課は安倍内閣を驚かせ、両国の政治的絆に緊張を加えた。「米日貿易協定」に向けた交渉の2018年9月の公表は、両国の貿易の相違を管理したいという両サイドの意欲の約束に満ちた兆候であったが、このレポートの執筆時点では、これらの対話は不明 瞭なものにとどまっている。

最後に、負担分担に関する熱を帯びたレトリックは、同盟国の防衛支出に関しての新たな議論 を余儀なくしている。日本はそれ自身の防衛支出とホスト・ネーション・サポートの貢献の両方を通じて、同盟国の防衛能力に対して意義ある金額を貢献している。これまでの概算では、日本 政府は日本における米軍を支援する経費の約75%を支払っている。今年だけでも、日本政府は、 その他の同盟関連経費のなかでも、コスト分担のために1970億円(17億ドル)、米軍再編のた めに2260億円(20億ドル)、いろいろなタイプの地域支援のために2660億円(24億ドル)を予 算に計上した。これらの同盟への現実的かつ実質的な貢献は見逃されるべきではない。

それにもかかわらず、今後の中期防衛力整備計画と防衛計画の大綱において日本の防衛支出が 増大し、反映されることが重要となる。中国の能力と野心の成⻑、および北朝鮮の核とミサイルの脅威は、日本が国内総生産の1%以上を防衛に支出することを求めている。
 最後に、生の予算の数字よりも問題になるのは、同盟に対する日本の貢献の有効性である。 貧弱に支出される金銭は敵対者にとって抑止ともならないし、友人にとって再保証ともならない。もしも日本のリーダーが合衆国の現実に関してもっと関心を持つようになれば、二倍の能力での 投資を余儀なくされるだろうし、それは貴重な同盟資源の浪費となる。中国、北朝鮮、ロシア からの増大する挑戦の真っ只中で、同盟はそのような非効率性の余裕を持つことはできない。この文脈において、東京とワシントンのリーダーは共有の目標のセットを明確に述べることが大 切である。

 変化する経済の現実


ワシントンと東京は、経済に関していつも目と目を見つめ合うということをしていない。しかし、近年は経済的利益における劇的な収束をみてきた。それは事実上の米日自由貿易協定であるTPPの成功した交渉によって象徴されている。米国と日本を合わせると、その協定の対象となる 経済活動全体の約80%を占め、それはデジタル経済や国有企業のような主要分野で高水準を維持している。TPPの交渉は米日安保条約第2条の野心を了解することにこれまでよりももっと近 づくことをもたらした。このしばしば忘れられてきた規定は、自由な制度を強化すること、国 際経済政策における紛争を排除すること、経済的な協力を促進することを、同盟国に求めている。第2条は米日経済協力の増大の枠組みと指令の両方を規定している。自由な制度を強化し、経済協力を増大させることについてのその呼びかけは時宜に適している。したがって、トランプ 政権がTPPから脱退する道を選んだことは、何にもまして不幸なことである。経済的利益の収束を作り出すために、米国と日本は別の協力の道を追求しなければならないだろう。

中国の挑戦とトランプ大統領の選挙の勝利を推進した経済不況への取り組みという両方の 課題に対する答えの一部は、より強固で調整された地域的な経済的アジェンダの共同追求で ある。最近の経験は、米日経済協力の力を示している。地域的な競争が激化し続けるにつれ て、米国と日本の戦略的利益を確保するためには、同盟の経済的次元を強化することが不可欠である。これは太平洋の両側での熱心な取り組みを要求するだろう。米国と日本が商業問 題で競争しているが、トランプ政権は、日本は経済的な競争相手ではないことを認識する必 要がある。むしろ日本は共有された価値と利益をともにする死活的なパートナーであり、我々の共有された利益を前進させ、アジアにおいて独立した指導的な役割を果たすことのできる 存在であり、その経済的成功は米国にとって直接的・間接的な利益の両方をもたらすのである。
 アメリカと日本の貿易と投資の利益はおおむね一致している。我々の経済外交はその共通のアジェンダを反映し、拡大させるべきである。TPPからの米国の撤退は、中国の経済的選択を形 成するのに必要なルールの作成と市場への影響力をワシントンと東京の両方に損なった。ワシントンにおけるTPPの政治は近い将来は好都合でない。そこで、北京が貿易と投資のための代 わりとなる規則のセットを擁護し続けている中で、米国と日本がどうやって勢いを回復できるか という問題がある。

アメリカが貿易政策に関して自らの方向性を見出すまで、日本に地域的な経済協定のリーダーとしての役を割り当てることによって、安倍首相は一つの重要なステップを前に進めている。米国が加わることがなければ協定の経済的なインパクトは大いに減少することを認めながらも、 CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)の他のメンバーは日本 のリーダーシップを歓迎している。米国における現在の政治環境のためにこれは必要であるが、 日本は、ルールに基づく高水準のリベラルな経済秩序の支持と前進を確実にする経済的重要性 を有するこの地域における唯一のもう一つの国であるので、また適切でもある。このことは、 東京がワシントンのイニシャチブの支持を超えて、地域秩序の共同のリーダー・真に平等なパー トナーとなるために進まなければならないこと、ワシントンが近い時期に支援的ではない場合にも我々の共有するアジェンダを推進させる提案を前進させることを望みまたそうできること を、意味している。

米国と日本はまた、全体の地域を横断する投資に基づき「デジタルな絹の道」を創出し、ハ イテク産業を支配するという公表された戦略を含めて、中国の略奪的な経済政策からのオープ ンな地域構造に対する大きな挑戦に直面している。北京によるこれらの宣言が有望なものである か否かにかかわらず、米国・日本・欧州連合は世界中で相対的にオープンな規則を基盤にした投 資環境を保持するために、共通の戦略が必要であるという事実が残っている。

 野心的なアジェンダ

米国と日本はどのようにして、増大する国内外の挑戦に対応して同盟を強化することができるだろうか。同盟国は特定の行動可能なイニシャチブの野心的なセットを確定することから始める必要があり、その後にそれらを上手にまた緊急に実行することに着手しなければならない。 潜在的なイニシャチブを選ぶ際に、同盟は3つのなすべき命題に焦点を当てるべきである。すな わち、戦略的有効性、政治的持続可能性、資源の効率性である。

同盟の全体的な目的は共通の利益を保護することである。我々はこのことを忘れてはならな い。中国、北朝鮮、ロシアによって開発され実行されている、軍事能力と強制的行動の成⻑する陣 容を考慮すると、同盟国の抑止力と戦闘効果を強化することが、一番大切である。それに加えて、 太平洋の両側からの国内の政治的支援がなければ、米国も日本も信頼できる同盟国にとどまる ことはないだろう。したがって、政治的な持続可能性は必須命題であり続ける必要がある。最後 に予算はワシントンでも東京でも限定されているので、同盟国はまた、乏しい資源をもっとも 効率的に利用しなければならない。

これからの数年間で、米国と日本が同盟の有効性、持続可能性、効率性を強化するために行うことができるものはたくさんある。我々はいくつかのカテゴリーに分類される、10の具体的 なイニシャチヴを提案する。二国間の経済的結びつきを強めるために、我々はオープンな貿易と投資の体制への再コミットを勧告する。作戦の調整を深めるために、我々は、共同の基地か ら作戦すること(operating from combined bases)、共同の合同軍を設立すること(establishing a combined joint task force)、日本の合同作戦司令部を創出すること(creating a Japanese joint operations command )、合同の不確定事態の計画を実行すること(conducting combined contingency planning)を勧告する。共同技術開発を前進させるために、我々は防衛装備を共同開発すること、ハイテク協力を拡大することを勧告する。地域パートナーとの協力を拡大する ために、我々は三国間の安全保障協力を再活性化させ、地域基金を立ち上げ、より広範な地域経 済戦略を形成することを勧告する。各々の勧告は以下に述べる通りである。

 二国間の経済的な結びつきを強化する


 1)オープンな貿易・投資体制への再コミット

TPPの米国の拒絶によって引き起こされた制約を認識して、日本と米国はアジアの貿易自由化を前進させ、高い期待を設定し、決定的な規範を再確認できるイニシャチブを特定すべきであ る。米国の全面な参加を最終目標として、日本はCPTTPを引き続き支持すべきである。その一 方で、日米の交渉者は我々の経済の間で増大するセクター別貿易自由化を達成するために、TPP のアジェンダを用いるべきである。両国政府は残っている構造的問題に取り組むための実務上の議題を設定するために、両方の首都からの上級の政府高官とともに、米日のCEOがともに参加 する「ビジネスと政府の対話」を設立すべきである。米国は、これらの対話に告知でき、米日の 貿易自由化にとって将来の図を描くことができる韓国、シンガポール、オーストラリアとの自由貿易協定を有している。

 作戦上の調整を深化させる


 2)統合された基地から作戦をする

第二次世界大戦後、米軍と日本軍(およびそれらの構成的なサービス)は日本にある別々の基地か ら運用してきた。日本にある一つの基地のみが、合同して統合されたものになっている。それは三沢基地であって、米空軍、陸軍、海軍と日本の航空自衛隊をホストしている。別個の基地から作戦行動 をすることは、戦闘面の制約があり、政治的な責任も意味する。それは同盟がもはや持つ余裕のない 贅沢品となっている。日本における港湾および飛行場の数が限られていることを考えると、別々の基 地を使用することは、同盟軍の柔軟性に制限を加える。それに加えて、別個の基地を運用することは 非効率的であって、施設と能力の重複を強要するし、我々が促進を求めている合同し統合された戦闘のアプローチを損なうものでもある。おそらく一番重要なことは、別個の基地を運用することは、潜在的なくさび形隊形の障害物を生みだすので、同盟にとって政治的な脆弱性を作り出すということであ る。

これらのすべての理由によって、同盟は、同盟国基地の合同し統合された使用に向かって進むべき である。これは、同盟の戦闘上の効果性、政治的持続可能性、資源の効率性を最大化することになる。第一段階として、両国政府は、どのようにして法的かつ作戦的な課題を克服するかを学ぶために、現存の統合された基地からの教訓を学習すべきである。最終的には、日本に駐留するすべての米軍は日本の旗のある基地から運用すべきである。⺠間の港湾及び飛行場へのアクセスは偶発事態においてまた必要となるだろう。これらの措置は、同時に戦闘能力を最大化し、負担分担の懸念に対処しながら、 同盟がホスト国の住⺠への負担を最小にするために働いていることを、示すことになる。

 3)統合された合同軍を設立する


米国と日本が統合された作戦により重点を置くにつれて、同盟の既存の司令構造を更新する必要が でてくる。重大な偶発事態において、現行の指揮関係は、最小限に言っても、複雑なものである。米国側では、インド太平洋司令部の司令官は、戦闘を指揮するだけでなく、ワシントンとの関係を管理 し、同盟軍と連絡をとることも含めて、様々な機能を果たしている。これは世界の人口と表面積の半 分以上について責任をもつ司令官にとって、大きな重荷となっている。米国と日本が危機においてよ り効果的に一緒に作戦をするためには、両国は⻄太平洋に関して統合された合同軍を創設すべである。

統合された合同軍は、台湾・南シナ海・東シナ海での中国との想定される偶発事態に焦点を当てることができる。そのような統合された合同軍は基軸的な米国の同盟国、特に日本を含むべきであり、 米国の同盟国及びパートナーと調整して開発される必要がある。危機の時にそのような部隊を立ち上 げることは難しいので、統合された合同軍は常設のスタッフと日常的な訓練と演習の責任を含むべきである。この地域は多くの領域での作戦を要求するので、統合された合同軍の司令官は各サービス間 で交代すべきである。このような組織は日本の司令官に偶発事態における対応者のいっそう明確なセッ トを与え、サービスの機能時障害を取り除くのに役立つであろう。

 4)日本の合同作戦司令部を創出する

米国がその司令と指揮命令系統を更新する必要があるのと同じく、日本もまたそのようにする必要 がある。日本の現行の司令部の構造は、日本の自衛隊の統合幕僚⻑にあまりに大きな負担を課してい る。現在、統合幕僚⻑は戦闘司令官と防衛の⻑の両方として効果的に働いている。これらの職責を分 断することは、特に重大な不測の事態の発生時には、日本軍の作戦上の実効性を増大させる。したがっ て、日本は統合幕僚⻑の責任のいくつかを下位の司令官に委任すべきである。

日本はよりフォーカスされた軍をもっているので、米国の戦闘指揮構造は日本が模倣するには悪い モデルである。そのかわりに、オーストラリアのもっと合理化された指揮構造のほうがいっそう適合 すると、我々は信じている。オーストラリアは、合同作戦の⻑として仕えている三星の司令官によっ て指揮される合同作戦司令部を設立した。この司令官はすべての軍事作戦と軍の訓練と準備について 責任をもっている。このようなモデルは、将来の作戦を遂行する軍のメンテナンスと準備を確保する 必要性とともに、高いテンポの日常的な作戦の要求の緊張を管理している日本の司令官たちの助けと なるだろう。従って日本のリーダーたちは、オーストラリアの構造をモデルとするが、日本の特有の 組織的・法的・歴史的・文化的特性を考慮して修正された、彼ら自身の合同作戦司令部を創出すべきである。アメリカと日本の指導者たちはそのような司令部が米軍とまたそれらの進展する指揮構造と 一緒に緊密に働くことができるように、ともに働くべきである。

 5)統合された不慮の事態の計画を実行する

米国と日本が侵略行為に迅速に対応するには、既存の対応計画とオプションをもつ必要があ るだろう。統合された作戦はますます統合された計画を必要とする。いくつかの統合された計 画がすでに存在しているが、それはあまりにその場限りのもである。中国はしばしば既成事実の 戦術に頼っており、それは遅い決定策定サイクルを利用するものである。同盟の決定策定のスピー ドを改善することが、従って重要である。司令官は、ある種のタイプの作戦の場合には政治リー ダーによる事前の調整を必要とするので、迅速に行動する必要がある。それに加えて、そのよう な事前計画は米国と日本の防衛軍によって行われるだけでなく、日本の海上保安庁を含めた種々の法執行組織とともに、行われるべきである。

統合された計画は⻑らくヨーロッパとアジアの両方におけるその他の米国の同盟国の一つの特徴になってきた。例えば、米軍と韓国軍は、北朝鮮のエスカレーションを抑止し対応するため の反撃計画を共同開発してきている。事前の計画と調査は、北朝鮮の冒険主義を制限するのに役立ってきた。それに加えて、エスカレーション行動がより大きな同盟の調整を導くことを示すことによって、統合された計画は侵略の動機を無くす助けとなることができる。特に東シナ海ににおける成⻑する挑戦に直面して、この付加的な抑止力は決定的である。それに加えて、同盟国は、 主要な紛争のレベルの下で起きる侵略を含めて、いわゆる「グレーゾーン」において米軍のより 早期の関与を考慮すべきである。米日安保条約第5条の下での武力攻撃の閾値を超えるかどうか にかかわりなく、いかなる侵略行為もより深い同盟国の協力の引き金となることを、このステップは明らかにするだろう。従って、同盟国は関連する法的制限に従って、より構造化された統合された計画に従事すべきである。協力を進化させるために、日本は、自衛隊の将官を、インド太 平洋司令部の計画スタッフを含めて、関連する米国の部隊内に組み込むべきである。




 共同技術開発を前進させる

 
 6)防衛装備を共同開発する

米国と日本は共通の能力要件に焦点を当てて、合同研究開発の努力を拡大し続けるべきであ る。SM-3 ブッロク IIA 弾道ミサイル迎撃弾のようなシステムの最近の合同の共同開発は、共通 の能力要件を満足させる両国の専門性を活用する同盟の能力を示してきた。合同研究開発の努力を継続的に拡大させることは、同盟国の防衛支出の効率性と有効性の両方を増大させるだろう。急速に現代化する中国軍に直面して、同盟国は合同の脅威評価を実施し、より高度なシステムを 引き続き獲得し、斬新な運用コンセプトを開発しなければならない。

米国と日本は種々の領域を横断した様々な専門分野から利益を得ることができる。地上では、 同盟国は、共同開発した新しい先端レーダー、より費用効果の高いミサイル防衛、⻑距離の対艦 ミサイルの共同開発を目指すべきである。空中では、同盟国は、新しい戦闘機と ⻑寿命海洋領 域認識プログラムを開発する努力を続けるべきである。海では、同盟国は、将来の海上戦闘員のための設計を共有し、海底システム用のバッテリー技術について協力し、新しい水陸両用車につ いて一緒にに働くべきである。宇宙では、同盟国は、宇宙情勢認識能力を改善し、宇宙建築物 の強靭性を拡大することを追求すべきだ。これらは米国と日本が協力して取り組むべき領域のいくつかにすぎない。これらの線に沿った共同の努力は、米国と日本の政府と両国の防衛産業の基盤の両方の、持続的な緊密性を示すことになろう。

 7)ハイテク協力を拡大させる

米国と日本は、情報共有、サイバー、宇宙、人工知能を含めた、多様なハイテク問題に関する協調を改善すべきである。これらの領域における同盟国のリーダーシップは、両国の経済的な将来、持続的な安全保障に対して決定的である。米国は政府と⺠間セクターの両方において、こ れらの領域のそれぞれにおいて前進している。同盟国が技術開発努力をリンクさせるためにともに働かなければ、日本はこれらの領域のいくつかにおいて置いていかれてしまう危険がある。

⻑期のより深い協力のための一つの機会は、米英豪加ニュージランドとのFive Eyes intelligence sharing network(五カ国情報共有ネットワーク)に日本を包含することである。日 本はすでにこれら諸国と強い関係を築いているが、他方で、ミサイル防衛、対潜水艦戦、宇宙 をベースにしたイメージ化についての情報の共有は、重要な前進の一歩を記すことになる。五カ国ネットワークへの包含を現実的な可能性とするのに必要な、安全保障上の保護を採択するよ うに、日本は急いで動くべきである。もう一つの潜在的な機会はサイバー・セキュリティーに あり、それは東京での2020年のオリンピックに先駆けて重要であろう。米国政府と米国の⺠間 部門は、この領域における協力を拡大するために、日本の当局や会社と一緒になってより緊密に働くべきである。宇宙や人工知能のようなその他の領域においても、同じことがあてはまる。これらはより大きな同盟の協調と協力を要求する、経済的・軍事的な両方の競争が増大する領 域である。

 地域的なパートナーとの協力を拡大する


 8)三国間の安全保障協力を再活性化させる

米国と日本は北朝鮮が、核兵器、弾道ミサイル、その他の大量破壊武器のすべてを永久にか つ不可逆的に廃棄すべきだという目標を共有している。米国と韓国の最近のサミット外交にもか かわらず、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルのスペクトルは、すべての3つの同盟国の安全保障に対する現存する脅威のままになっている。米国と北朝鮮間または南北朝鮮間の将来の対話の方向性がどのようなものであれ、政府の最上級レベルにおけるワシントン、東京、ソウル間の積極的 で定期的な三国者の政策調整はより効果的な外交を確実なものにし、三つの同盟国のすべての利益を保護するであろう。平壌はこれらの同盟関係を壊すことを追求しているので、我々は、三つ の同盟国が引き続き政治的に強く、軍事的に有能であることを示す努力をすべきである。

偶発事態のためによりよい準備をするために、日韓の二国間防衛協力は、情報の共有の改善 および軍備の整備に焦点を当てるべきである。それは、また各国の米国との二国間同盟を強化することになる。三つの同盟国は、北朝鮮の核兵器、弾道ミサイル、脅威の拡散に対抗するた め、三国間の演習を拡大すべきである。もっとも重要なことは、北朝鮮との交渉が可能な平和条 約を含めて未知の領域に進んでいくとしても、米国、日本、韓国が統一した立場を維持し、いか なる中核的な同盟の権利をも犠牲にすることを避けることが決定的となる。演習、部隊のプレゼンス、ミサイル防衛は、北からの検証できない不完全な非核化の約束のための、取引のため のチップとなるべきではない。なぜなら、その選択は、結局は、米国、日本または韓国をより 安全にしないからである。

 9)地域的なインフラ基金に着手する

おそらく米国と日本にとっての最大の地域の挑戦は、インド太平洋地域の全域で中国の政治的・ 経済的影響が拡大していることである。特に中国の一帯一路構想は、特に東南アジア、インド洋、 太平洋諸島の小国に関して、実質的な影響力を与えている。事実、アジアは下部構造にもっと多くの投資を必要としているし、ビジネスは本来競争力があるが、競争はオープンでかつルールベースでなければならない。地域のインフラへの中国の投資はしばしば歓迎されるが、それが作り出している、そして時には使われることもある威圧的な政治的・経済的な影響力はそうではない。 米国と日本の同盟は、魅力的な選択肢を提示できることを立証しなければならない。立法機関 が機能し、よい統治、自由なプレスがある開かれた社会への米国と日本の支持は、この地域の 諸国が、オープンで威圧的でない環境におけるインフラ投資を自由に選ぶことを確保する助け となるだろう。その際に、米国と日本は中国の投資の範囲または規模−それは、1 兆〜8 兆ドル に及ぶと様々に宣伝されている−に匹敵することを求めるべきでない。結局、この地域におけ る同盟国の外国直接投資は相当な額になっているが、それは⺠間の会社や商業的論理によって主に実行されている。これは中国のアプローチの場合には部分的にしか当てはまらない。

最大のインパクトを得るためには、米国と日本は、この地域のもっとも魅力的なプロジェクト とパートナーに投資することを選ぶべきである。地域のプレイヤーは投資を望んでいるが、彼らはまた負債の罠、腐敗と強制を避けることを望んでいる。したがって、高水準の投資、ローカルな労働の雇用、社会的環境的なセーフガード、オープンな調達の慣行、および一貫した投資収益に対する同盟国のコミットメントは、依然として魅力的である。同盟国は、世界銀行、アジ ア開発銀行、アジア太平洋経済協力などのような現存の多国間機関を利用し、またそれらに投資 することによって、これらの高度な標準を促進すべきである。これらの機関では米国と日本は不均等な影響力をもっている。この価値を実証するための一つの選択肢は、インフラと能力構築のための、地域的な基金を立ち上げることだろう。そしてそれは、米国・日本及び他の国々がイン ド太平洋中のそれぞれの投資をよりよく調整し、目標設定することを許すことになろう。そのような努力の主要パートナーには、とりわけオーストラリア、韓国、インド、ニュージーランド が含まれるべきである。

 10)より広い地域的経済戦略を構築する

2016年11月の選挙は、米国または日本の永続的な経済的利益を変化させなかったし、ワシン トンと東京の間の商業的財政的収束をもたらしてきた強力な明白な潮流を変更もしなかった。 TPPに加入署名することの米国の失敗は、米日合同経済の政治的手腕に対して重大な後退を与えたが、それは協定の根底にある論理を排除しなかったし、さらなる協力についての扉を閉めることもなかった。日本と米国は、東南アジアにおける支配的な投資者にとどまっており、そこで はアメリカの⺠間投資だけで中国のそれより約三倍以上になっている。貿易、投資、開発、財政 サービスにおける現存の指導力を活用することは、我々の共有された地域利益の保護にとって不 可欠なものとなる。これは、短期的な二国間貿易赤字について狭く焦点を当てるよりも、我々の経済とビジネスのリーダーたちが持つべき、⻑期の討論のタイプである。米国と日本は経済的 論点の95%について同意しているが、我々はお互いの違いを討論するのに95%の時間を費やしている。

米日安保条約の第2条を履行するには、以下のようないくつかの基本的な問題に答える、リフレッシュされ再構成される二国間の経済的な対話が必要となる。それらは、基本的な意味に おいて(例えば、インターネット・ガバナンスのような新しい経済の呼び物)、あるいは制度的な文脈の範囲内において(例えば、アジア開発銀行 やその他の市場を基盤とした開発メカニ ズムの支援)、あるいは国別ベースに基づいて(例えば、ミャンマーかベトナムか)、米国と日本が効果的な協力を追求している分野はどこか。未発達なまたは機能不全の協力のメカニズムはどこにあるのか。ワシントンと東京が誤った立ち位置になっているのはどこかという問題である。 TPPからの米国の撤退は、ワシントンと東京が、共通の戦略的利益のために相対的な経済的利点を発揮する創造的な方法を、もっと積極的に追求することを必要とする。我々の資産の批判的な評価と、公的・私的なセクター両方を含めた調整に対する再度の想定のアプローチが、我々 と我々の地域的なパートナーが望む共有された未来を確保するのに大いに役立つだろう。

実際にはより効果的な協力とは何を意味するのか?  第一に、それは共通の優先事項を損なう注意散漫を避けるべきである。経済的利害が時には分かれることがあるが、我々は市場に損害 を与えることなくこれらの違いを狭くし、危険を軽減することができる。そうした中で、市場 アクセスの問題は国家安全保障問題として誤って見なされてはならない。
 第二に、東京とワシントンは、最良の慣行を活用した強力な投資と財政体制を通じて、地域 発展を支援したいという望みを共有している。我々の私的部門の投資、二国間援助または特に ADBやAPECといった投資機関の基礎的な役割の代わりになるものはない。

第三に、両国政府は貿易の成⻑に対する地域的および世界的な障害物に焦点を当てる必要が ある。これらは、国営企業の持続性、それらが作り出している市場の歪曲、我々の二つの革新的 な経済を推進してきた知的財産の不十分な保護、そして新しい経済会社の成⻑と、価値創造を可 能にしつ、オープンで適応力のある政策の必要性を含んでいる。両国においてまたAPEC やG20 といった地域機関やグローバルな機関を通じて働いている、以下の諸点を優先化すべきである。 1)デジタル商取引に関するルールの強化。2)国営企業を規律する共有化されたアプローチ。3))知的財産の保護のための積極的な新基準。4)問題となってきている部門における世界貿易機構 と一致した市場の公開。

第四の最後は、米国と日本は、通信インフラを支配し、ハイテク投資に関する相互主義を否 定する中国の戦略に直面して、開かれたインド太平洋を保持する戦略に基づいて調整する必要が ある。中国の略奪的な技術政策に関する日米欧貿易閣僚会議を設立するという日本による当初の動きはよい象徴的なステップであるが、三つの強国は共通の戦略に欠けており、米国と日本 はその討論を始める最良の位置にいる。国家安全保障の関心を提起している中国の投資家による センシティブなテクノロジーの取得に関して、情報の共有を増大するために、米国と日本はEU のパートナー、オーストラリア、その他の同盟国とともに仕事をすることができる。

 結論
 

米国は日本以上によい同盟国をもっていないし、今日この同盟はこれまで以上により重要で ある。共通の価値観、強固な⺠主主義、革新的な経済、地政学的影響力、そして実質的な軍事的 能力を含めた同盟国の多くの強さのために、米国と日本の同盟は地域の平和と安全保障の隅石であるとしばしばラベルを貼られている。しかし、同盟国には⻲裂が見え始めている。きたる べき数十年間米日同盟を再構築するには、厳しい決断と持続的な実施が必要であろう。同盟国 の求める、平和で繁栄した地域・国際秩序の環境を保持していくためには、米国と日本が、オー ストラリア、韓国、インド、アセアンのメンバーやその他を含む主要な地域的なパートナーとよ り緊密に働くことが必要になる。ここで概観したアジェンダは、21世紀の残りの期間に同盟と 世界のよりよい準備のために今日まで行われてきた重要な仕事に基づいたものである。

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