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2018-11-26

平和憲法研究会(2018.11.11、明治大学)での報告レジュメ

CSIS レポート “More Important than Ever: Renewing the U.S.-Japan Alliance for the 21st Century” (2018.10.3) の紹介と検討

稲正樹

1 レポートの紹介

2 検討
(1)知日派とは誰か
・CSISでのシンポ参加経験
・Gavin McCormack & Satoko Norimatsu, Resistant Island: Okinawa Confronts Japan and the United States, Rowman & Littlefield, 2012. ガバン・マコーマック、乗松聡子『沖縄の<怒>ー日米への抵抗』法律文化社、2013年。
・猿田佐世「日米安保体制克服にむけた方法論ー『新外交位イニシャティブ』の意義」日本平和学会2016年度秋季研究集会報告。
ワシントンからの拡声器効果。ワシントンの日本コミュニティの3条件:①日米同盟の強化、②米軍のプレゼンスの維持・増強、③自由貿易の追求。ワシントンの日本メディア

(2)レポート全体の基調
①日本のより積極的な外交・安全保障政策を要求:「強い自信に満ちた日本」
②中国と北朝鮮の「脅威」を過大に強調
③2030年までの野心的な達成可能なアジェンダの提起

(3)同盟の成功をもたらした4つの強みとそれへの挑戦
①平和で安定した地域秩序・国際秩序の構築→国際秩序の危機。オアルタナティブなガバナンス・モデルとしての権威主義的資本主義の広がり
②基本的な価値の共有→トランプ政権の同盟国への取引的アプローチと権威主義リーダーへの無条件の関与。
③世界最大で革新的な経済→保護主義の脅威
④北東アジアにおける実質的な軍事力の保有→中国の軍事的現代化

(4)「変化する政治的現実」では、日本の防衛支出の増大を要求し、国内総生産の1%以上の支出を要求。とともに「同盟に対する日本の貢献の有効性」を問題にしている。

(5)「変化する経済的現実」では、安保条約2条に殊更に言及し、米日経済協力の増大の枠組みと指令の両方を規定していると言う。「より強固で調整された地域的な経済的アジェンダの共同追求」。CPTPPにおける日本のリーダーシップを持ち上げ、中国の「略奪的な経済政策」に警鐘を鳴らす。安保条約2条「締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。」外務省の解説「この規定は、安保条約を締結するに当たり、両国が当然のことながら相互信頼関係の基礎の上に立ち、政治、経済、社会の各分野において同じ自由主義の立場から緊密に連絡していくことを確認したものである」。

(6)戦略的有効性、政治的持続可能性、資源の有効性をキーワードにしながら、10個の「野心的なアジェンダ」を提起している。
・二国間の経済的な結びつきを強化する
1)オープンな貿易・投資体制への再コミット
・作戦上の調整を深化させる
2)統合された基地から作戦をする→米軍基地と自衛隊基地の合同し統合化された使用。つまりいま議論されている日米地位協定の改定どころか、究極の軍事的合理性のみを勘案した、日本の国家の独立性の放棄、主権の放棄を主張している。
3)統合化された合同軍を設立する→米軍と自衛隊による、西太平洋における合同軍編成の勧告。台湾・南シナ海・東シナ海における中国との軍事衝突の可能性に対応するために編成される。しかし、これが日米両国軍隊の全面的な合同を含意しているかは、文脈からは不明。
4)日本の合同作戦指令部を創出する
オーストラリアの合同作戦本部をモデルとすることを提唱。オーストラリア統合作戦本部長来訪の記事(防衛省HP)。下記のチャートを参照。
5)統合された不慮の事態の計画を実行する→日米軍部による緊急事態対応の計画化の勧め?
共同技術開発を前進させる
6)防衛装備を共同開発する→陸海空、宇宙における各種軍事装備、システムの合同研究開発の勧め。日米の軍産官(学)複合体の持続的な緊密性を発展させることを主張。
7)ハイテク協力を拡大させる
情報共有、サイバー、宇宙、人工知能などのハイテク分野に関する協調の改善が必要と言う。Five Eyes intelligece sharing network、サイバーセキュリティなど。
地域的なパートナーとの協力を拡大する
8)三国間の安全保障協力を再活性化させる→日米韓の積極的で定期的な政策調整。政治的に強く、軍事的に有能であることを示す努力。米朝関係がどのように進展しようと、参加国は軍事演習、部隊のプレゼンス、ミサイル防衛を堅持すべきと主張。朝鮮半島における緊張緩和、朝鮮戦争の終結とそこに向かうムン・ジェイン政権の努力を歯牙にもかけない現状維持路線を露骨に表明。
9)地域的なインフラ基金に着手する(立ち上げる)→中国の投資規模に匹敵することはできないとしながら、オーストラリア、韓国、インド、ニュージランドを含めた、インフラと能力構築のための、地域的な基金の立ち上げを提唱。
10)より広い地域的経済戦略を構築する
米日が共通の戦略的利益のために相対的な経済的利点を発揮する創造的な方法をもっと積極的に追求する必要性。より効果的な協力の4つの意味。

(7)結論では、きたるべき数十年に向けて、日米同盟を再構築するための厳しい決断と持続的な実施が必要とする。

3 まとめ
レポートのいう「平和で繁栄した地域・国際環境の保持」とは、日米によるアジアとグローバルな世界における軍事的、経済的支配の勧めである。改めて、私たちからの日米関係についての各論と総論に関して代替案を具体的に提示する必要性を痛感した。日本を含めた北東アジアの平和構築と地域協力の展望の作業を続けていかなければならない。

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