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2018-11-18

安倍改憲を考える-特に9条改憲をめぐって

2018.10.13.青年会議所 青森

安倍改憲を考える
特に9条改憲をめぐって

三輪 隆 (元埼玉大学教員、平和・憲法問題研究、ネット103メンバー)
takm@cameo.plala.or.jp

【0】改憲の発議、国民投票の可能性は?

イ)政治日程の難しさ
19.7.参院選:改憲反対議席1/3回復の可能性
19.3-4. 統一地方選挙
19.4-5. 天皇代替わり
19.10. 消費税10%
* 野党共闘の状態によっては先送り
ロ)改憲は与党、改憲派:国民投票にためらい
17.10.総選挙比例票:安倍改憲反対票+生活票>改憲諸派得票
ハ)「やるときにはやる」:17.10.解散の断行実績
17.5.3.以来の度重なる安倍発言
法制局もかんだ叩き台は既にできている

国民投票日から逆算すると:運動期間「最初は6ヶ月」合意 → 秋の臨時国会に原案提出? 改憲案についての改憲諸派の一致:発議へ??

【1】憲法とは何か?

1.国家は法を求める

支配関係が成り立つ条件
その1.支配する者が暴力をもつ  サンクションの最終的実力
その2.支配される者が支配を受け容れる:同意がある(=正当性)
a)実質的な同意:人々が有益と考える社会活動を行い、有意義なものだと受け容れられる
b)定まった形式に即している:法的な資格、名義、権限をもち、その仕組みに則っている
Eg. モリカケ問題は未解決、しかし安倍内閣支持は相対的多数

国家によるサンクションが「正しい」と受け容れられるb)のタイプ
イ)伝統:昔からズーッとそうやっているという意識
ロ)カリスマ:あの人なら正しい、信頼できる
ハ)法

国家支配も正当性をもつためには、単に実質がともなっている(a)だけでなく、法の裏付けがあることが支配をより安定したものにする。
2.番犬を縛る

−1)国家(サンクション主体)をだれが監視するか? どう縛るか?

−2)constitutionalism 憲法とは、<国家権力を縛るルール>
権力者の自己拘束(eg.聖徳太子17条憲法)に期待できるか?
憲法政治:政治支配の究極の根拠は憲法
憲法あっての国家
・ 天皇発言「皆さんと共に憲法を守り」のおかしさ

3.憲法ならどんな憲法でも良いのか?
* 基準としての人権:個人の自由・平等の保障 など
<かけがいのない個人>という人間観
Q1.どういう個人を想定するか?
eg. 「自立した人間」(有産者、白人男性)
では、貧乏人、女性、障がい者は?
Q2.いかなる自由を重視するか?
eg. 思想信条、経済活動
では、人間らしい生存や尊厳は?

【2】自民党改憲4項目

1.教育の充実 第26条
(第1、2項は現行のまま)
(第3項)国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない。
第89条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。

1)現状
公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律 (高校の授業料無償化・就学支援金法、2010年)民主党政権
1条 この法律は、公立高等学校について授業料を徴収しないこととするとともに、公立高等学校以外の高等学校等の生徒等がその授業料に充てるために高等学校等就学支援金の支給を受けることができることとすることにより、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的とする。

高等学校等就学支援金の支給に関する法律(高等学校等就学支援金法、2014年)安倍政権下
1条 この法律は、高等学校等の生徒等がその授業料に充てるために高等学校等就学支援金の支給を受けることができることとすることにより、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的とする。

2)国際条約
〇国際人権A規約(社会権規約)13条:中等・高等教育の「漸進的無償化」66年採択、79年日本批准
13条 この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。《以下略》
② この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
(a) 初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。
(b) 種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、一般的に利用可能であり、かつ、すべての者に対して機会が与えられるものとすること。
(c) 高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。《以下略》
1979年批准した際、政府は「日本国は、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第13条2(b)および(c)の規定の適用に当たり、これらの規定にいう『特に、無償教育の漸進的な導入により』に拘束されない権利を留保する」と宣言
〇子どもの権利条約28条:子どもの教育への権利の「漸進的達成」、中等教育への「無償教育の導入」 ※無償教育の「漸進的達成」原則⇒制度後退禁止原則(89年採択、94年日本批准)
28条 締約国は、教育についての児童の権利を認めるものとし、この権利を漸進的にかつ機会の平等を基礎として達成するため、特に、
(a) 初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする。
(b) 種々の形態の中等教育(一般教育及び職業教育を含む。)の発展を奨励し、すべての児童に対し、これらの中等教育が利用可能であり、かつ、これらを利用する機会が与えられるものとし、例えば、無償教育の導入、必要な場合における財政的援助の提供のような適当な措置をとる。
(c) すべての適当な方法により、能力に応じ、すべての者に対して高等教育を利用する機会が与えられるものとする。《以下略》

3)検討
憲法26条2項・義務教育無償規定・1項の教育を受ける権利を実効的に保障するために(義務教育以外の)教育を無償化することを妨げられない
日本:GDPに対する公財政教育支出:OECD34カ国中最下位
※高等教育の費用負担の対GDP比:私費負担1%・公的負担0.6%
(公的負担はOECD諸国中最下位)

2.参院選「合区」解消

第47条 両議院の議員の選挙について、選挙区を設けるときは、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるものとする。参議院議員の全部又は一部の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる。
前項に定めるもののほか、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
第92条
地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本とし、その種類並びに組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。

憲法43条には、衆参両議院は「全国民を代表する選挙された議員」で構成
都道府県代表?
参議院の権限、両院制の変更

3.緊急事態条項

第64条の2 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。
(※国会の章の末尾に特例規定として追加)
第73条の2
(第1項)大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
(第2項)内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
(※内閣の事務を定める第73条の次に追加)

1)既に対処法令は整っている
a)参議院緊急集会:「衆議院が解散されたとき」の定め(憲法54条2項但書)、選挙期日(公職選挙法31, 32, 57条) ⇨ 衆議院の任期満了時にも適用したところで、何か問題の起こるはずもない
b)非常災害が発生して国に重大な影響を及ぼすような場合,内閣総理大臣は、災害緊急事態を布告し(災害対策基本法105条),生活必需物資の授受の制限,価格統制,及び債務支払の延期等を決定できるほか(同法109条),必要に応じて地方公共団体等に必要な指示もできる(大規模地震対策特別措置法13条1項);
防衛大臣が災害時に部隊を派遣できる規定(自衛隊法83条)
都道府県知事の強制権(災害救助法7~10条等),市町村長の強制権(災害対策基本法59, 60, 63~65条等)など,私人の権利を一定範囲で制限する規定も

2)検討
a)議員任期の延長の要件は曖昧、また期限も制限なくお手盛りが可能
b)①国会開会中でも「国会による法律の制定を待ついとまがないと認める」ときは法律に代わる政令(現在は委任命令・執行命令に限定)を定めることができてしまう(明治憲法の緊急勅令と同じ)。②緊急事態の宣言、国会承認、解除などの要件(自民党12年改憲案98条)の欠如、③自然災害への限定なく、「武力攻撃事態」への適用可能 ⇨ 有事立法

3)安倍政権の現実の対応
・ 17.6. 野党議員が憲法53条に基づき臨時国会の開会を要求、
政府は3カ月あまりにわたって開会を拒否;開会したら冒頭解散
・ 18年夏の関西災害時の国会開催拒否

4)準備していないことはできない:事前準備の重要性
縦割り行政の中央の権限強化よりも、現地自治体の権限強化・主導が必要;国は「後方支援」

【3】「自衛隊を認めるだけ」なら問題はないか?

改憲案:第9条の2
(第1項)前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
(第2項)自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

1.災害出動はオマケ

1)世論:災害派遣を評価、期待

関心がある理由:大規模災害などへの対応 34.0 → 26.5 → 41.7
平和と独立を守る組織だから 39.4 → 46.1 → 32.2
国際社会の平和安全のため活動 19.1 → 19.8 → 18.9

12/15年
自衛隊の存在目的:災害派遣 82.9%  81.9%
国の安全確保 → 74.3
今後、力を入れて行ったら良い面:災害派遣 76.3 → 72.3
国の安全確保 → 69.9
18年・期待する役割:災害派遣 79.2%
国の安全確保 60.9
国内治安維持 49.8
MD 40.2

2)隊員自身の希望

15年法成立以後、隊員応募の混迷;防大卒の任官拒否増大

3)現状
イ)自衛隊法第83条(災害派遣)、第83条の二(地震防災派遣)、第83条の三、(原子力災害派遣)
主任務:直接侵略及び間接侵略に対しわが国を防衛すること(第3条)
「同項の主たる任務の遂行に支障を生じない限度において」行われる
ロ)高い自己完結性、早期展開能力から32,000回以上の出動実績
しかし、災害派遣用の独自予算も、独自装備もない
ハ)災害出動は基地・演習場の外での軍事訓練の貴重な機会
eg. 16熊本地震救援:北海道・真駒内の陸自、東北自動車道・矢板北PAで横転事故
トモダチ作戦:日米共同調整所(97年ガイドライン)

2.米軍補完の外征軍部隊

1)「第一線救護」への取り組み開始
前線での胸腔穿刺 、気道確保など

2)外征用装備の強化:イージス艦(1400)、オスプレー(550)、グローバルホーク(1000)、F35、SH60哨戒ヘリ

3)15年ガイドライン:アジア太平洋有事(>日本有事)の共同対処体制
自衛隊の相方:米太平洋軍
米統合戦闘軍は世界6地域の戦域に応じ指令を受ける戦闘軍が変わる。
第7艦隊(横須賀)所属艦船もペルシア湾では米中央軍の指令下

3)海自
海自掃海部隊は相対的に貧弱な米海軍の補完
潜水艦・イージス艦:空母戦闘群のなかで護衛任務
リムパックで積み重ね
共同ISR(intelligence, surveillance, reconaissance ) ⇨ 「アセット防護」 ⇨ ROE(部隊行動基準)共通化
米艦防護(隊法95条の2):17.5共同訓練で発令「さざなみ」「いずも」(共同巡航訓練)

4)空自:  共同演習 Red Flag Alaska(空中戦・空中給油), Cope North Guam(爆撃)など定期化

5)陸自:指揮権は5方面隊から陸上総隊へ一元化:機動部隊化
米海兵隊との共同強化:
2010年「防衛計画の大綱」南西地方防衛力強化:西部普通科連隊(佐世保)の奄美、宮古、石垣、与那国進駐
沖縄・佐世保・岩国の米海兵隊も使う共同基地化
グアム・テニアンも合わせ西太平洋共同防衛の態勢の一環へ

6)両軍の共同態勢
a) 同盟調整メカニズム(ACM):平時から緊急事態までの全ての状況(大規模災害から他国への武力攻撃、自衛隊の国際活動まで)における米軍・自衛隊の共同軍事対処協議機関・横田に平時から常設;軍人同士の協議が基本
b) 共同運用調整所(横田基地):共同作戦司令部
熊本地震オスプレイ派遣が最初の実動稼働
c) 共同計画策定メカニズム(BPM):共同作戦計画策定

* ミサイル防衛:Aegis Ashore、THAAD,
敵基地攻撃能力
防衛計画2013大綱「統合機動防衛力」:「弾道ミサイル攻撃の発射兆候を早期に察知、対応」

3.第4次アーミテイジ・ナイ報告 18.10.04.

防衛費をGDP1%以上へ
米軍・自衛隊基地の統合と共同使用
西太平洋での共同統合任務部隊(合同軍)
防衛装備品の日米共同開発の拡大
情報共有、サイバー、宇宙、人工知能(AI)分野での連携強化
日米韓共同軍事演習の拡大

【4】憲法上で認めたらどうなるか?

1.政治と社会の軍事化が飛躍的に進む

1)軍事が憲法上の正当性を得る
・ 自衛隊・防衛省が他省庁より上位へ
・ 軍事予算の拡大
・ 軍需産業・武器輸出

2)第2項との矛盾・憲法論争は続く
しかし、政治的力関係、司法判断によって2項は空洞化される可能性が高まる
9条が果たしてきた制約:
<合憲性(「自衛」の範囲に留まること)の立証責任が政府側にかかる>* が弱まる
* 従来の合理化 イ)武力ではなく「自衛権」の範囲に限定された「自衛力」
ロ)武力行使とは「一体化」しない範囲の「武器使用」
ハ)政策上の制約:1%枠、非核3原則、武器輸出規制など

3)外交

2.文民統制には限界

3.「人道的介入」
南スーダンPKO 任務遂行(住民保護など)のための武力行使
国連の外の多国籍軍(ISAFなど)への参加も

<中間結論:どうやら安倍提案の9条改憲はしないほうが良さそう。
しかし、9条に基づいて今後やっていくのが適当なのだろうか?>

<そもそも脅威は増しているのか? 米朝会談以降の動きは平和につながるのか?
<仮に脅威が減っているとしても、9条に基づいて自衛隊をなくしていくのではなく、ある程度の力を持った自衛隊と日米安保を続けるので良くはないか?>

平和・安全保障は国際関係・グローバル環境の問題であって一国だけで決められない
「安全保障環境の変化」なるものの内実は何か?
何をすべきか?

【5】 「もし攻めてきたら?」

軍事攻撃=能力+意図

1.「北朝鮮の脅威」という転倒
1)予算:香川県規模;石油は100%輸入、 石炭を輸出 近代戦を自力で闘えない
•  対韓比較 人口 1/2 (2515 vs.5000万人)、 所得1/21 (138.8 vs.2968ウォン)
cf. 東独・西独 人口 1/4 (1700 vs.6300万人)、 所得:43/100 ( 5400(85) vs.17314(88)ドル)
2)独裁政権にとっての米国の軍事脅威 OPLAN 5027, 5030 ⇨ OPLAN 5015
対米抑止力(核・ミサイル)の形成:先軍政治による強行達成
3)対日攻撃は在日米軍基地への反撃 cf. 日本海沿岸の原発
統幕「K半島事態対処計画」:着上陸作戦能力なし、ゲリラ・コマンドウ攻撃能力のみ

2.中国問題
1)米国をこえ世界最大の経済力 ⇨ 軍事力の保持可能へ
2)長大な国境線と民族問題;急激な高齢化、格差貧困の深刻化、環境問題など国内矛盾の国外転化
3)通商海路(第2列島線)の確保、台湾の(武力)「解放」方針
4)重要な経済パートナー:巨大市場、多額の外貨準備と米国債保有
mutual assured destruction 相互確証破壊関係(やれば共倒れの関係)

3.幻の「日本有事」
・ 水平エスカレーション戦略 の一環としてのソ連軍の北海道着上陸阻止
欧州戦線のソ連軍の牽制 ⇨ 極東ソ連軍攻撃 ⇨ SLBMの3回今日突破阻止
第七師団:戦車定数約224両、装甲車約150両。
・ 米軍の展開態勢見直 Global Posture Review(米軍再編)2001〜
指揮・後方支援機能の自衛隊との共同化:日本有事の実戦部隊不在は変わらず

4.日本の軍事的防衛は難しい

“都市化社会”に対する軍事攻撃への防衛(効果的対応)は不可能
・ 演習ヤマザクラ「住民は既に避難しているものと想定する」

1)ミサイル防衛 迎撃性能は未知数、過飽和攻撃に対応不能
予防的「敵基地攻撃」不能
2)A2/AD 精度の高めた短中距離・巡航ミサイルの撃退不能(Rand研究所報告)
(台湾作戦での嘉手納攻撃+尖閣侵攻? )
* いずれも在日米軍基地(安保条約6条)がターゲット

3)米軍来援  安保条約5条対応の米軍行動には議会の同意必要; GLの島嶼防衛は自衛隊主体
1)安保条約第5条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。
米国憲法:第1条第8節
NATO Treaty Article 5
The Parties agree that an armed attack against one or more of them in Europe or North America shall be considered an attack against them all and consequently they agree that, if such an armed attack occurs, each of them, in exercise of the right of individual or collective self-defence recognised by Article 51 of the Charter of the United Nations, will assist the Party or Parties so attacked by taking forthwith, individually and in concert with the other Parties, such action as it deems necessary, including the use of armed force, to restore and maintain the security of the North Atlantic area.

3)日米防衛協力の指針 2015.4.27.
自衛隊は、日本及びその周辺海空域並び に海空域の接近経路における防勢作戦を主体的に実施する。米国は、日本と緊密に調整 し、適切な支援を行う。米軍は、日本を防衛するため、自衛隊を支援し及び補完する。
自衛隊は、島嶼に対するものを含む陸上攻撃を阻止し、排除するための作戦を主体的に実施する。必要が生じた場合、自衛隊は島嶼を奪回するための作戦を実施する。、、、 米軍は、自衛隊の作戦を支援し及び補完するための作戦を実施する。

【6】東アジア安全保障環境の激変

1.米朝首脳会談の歴史的画期性
1)“朝鮮戦争の終結”(休戦協定から平和協定へ)=北東アジアの“冷戦体制”の解体へ
両国首脳の合意:イ)新たな米朝関係の樹立、ロ)朝鮮半島の恒久的かつ安定的な平和体制、ハ)朝鮮半島の完全な非核化の志向
新しい協調関係への長い過程:<体制保障と非核化>交渉の始まり
東アジア安全保障環境の変化
* 脅威は高まっているのではなく、緩和に向かって画期的な転換が日程化している>

2. 日本の安全保障環境の激変
朝鮮有事対応の日米安保条約(51年)・自衛隊の存在理由の減退・消滅へ

3. 背景
NK:独裁政権の生存保障
米国:軍事負担軽減(⇨ 同盟国肩代わり)、アジア市場・対中国シフト
北東アジア経済圏のネックとしてのNK
南北政府の平和・協力推進

4.せめぎ合い
強力な「脅威存続」論 とりわけ米軍産勢力と日本政府の抵抗
米朝両国首脳の国際的不安定さ

【7】脱軍事化の国際シナリオと9条

1.「専守防衛」の相対性
1)安全保障のディレンマ
相手方の意図に対する合理的な不安 ⇨ 万一への備え ⇨ 軍拡競争 ⇨ 衝突可能性の拡大
克服の要点:1)一方的なイニシアティブ、2)明確で持続的な政治意志と政策
2)基盤的防衛力構想の相対性
「自らが力の空白となって周辺地域の不安定要因とならないよう、独立国として必要最小限の基盤的な防衛力を保有する」
個別的自衛権、国土と周辺に限定、海外派兵禁止
周辺国の動向を理由とする軍拡を合理化し、安全保障のディレンマを克服し、軍縮に向かうものではない。

2.軍縮は世界(史)の喫緊の必要
<人間の安全保障> のための資源配分の転換:気象変動、格差貧困、災害など
軍事に資源を割いている余裕はない!
軍事に依存しない経済(成長)モデルの模索・出現

SIPRI 18.04.05. 全世界の軍事費総額:1.7兆ドル、全世界のGDP総額の2.3%
2015年9月採択「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2030年までに世界中の貧困と飢餓*を撲滅することを主目標とするプロジェクト)
達成には、各国がその防衛費の一割を拠出さえすればよい
* 生活費1日2ドル未満(極貧・飢餓人口)は8億人。発展途上国の総就業人口の3分の1
内政が不安定な国や内戦が続いている国では貧困率が特に高い傾向

1)東アジアにおける軍縮過程への一方的イニシアティブをとる
日米安保条約の見直し:10条前段「この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する」

2)(国内)災害対応こそ安全保障の最優先課題

大規模災害の増大:人間の力で予防することができない(cf. 戦争は人為 ⇨ 予防可能)
← 気象変動
← プレート活動の活発化:巨大地震活動期
・ 火山列島

被害を少なくするために備える
* 自衛隊の災害救援機能の飛躍的強化拡充(← 軍事部門の縮減)

3)グローバルな課題への対応

人々の平和のうちに生存する権利(憲法前文2項)の保障 に貢献する
a)前提となる基本姿勢:恨まれる原因を作らない ⇨ 軍事力行使を控え、極小化する。
b)紛争地の状況改善:現地の人々の努力に対する非軍事的援助に徹する。
c)環境破壊 水、エネルギー、巨大災害、医療など、人間の共通の必要への貢献能力を高める

憲法9条のもとで、日本は a) 武力行使を前提にした軍の派遣経験がなく、b) 警察、NGO援助機関などによる一定の経験蓄積を持ち、c) 非軍事の民生部門で人間の安全保障に貢献しうる高い技術力を持っている。

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