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2018-11-18

「今こそ、憲法について考えよう」

「今こそ、憲法について考えよう」
石村 修(専修大学名誉教授、法学博士)
日本福祉大学、2018年、11月4日(日)

今(2018年) → 出発点(1946年11月3日)日本国憲法公布
1947年5月3日 施行

今日、お話しする内容 1 憲法とは、どのような法規範か?
2 日本国憲法は、どのような経緯で作られ、
その特色はどのようなものであるのか?

3 日本国憲法70年の流れ、この70年の推移を診る
4 憲法改正の実施はあるのか?

1 憲法とは、どのような法規範か?
「近代立憲主義」という言葉  出発点は、フランス人権宣言(1789年)
アメリカ合衆国憲法(1788年)
「憲法の担い手である国民が定めた①、最高規範であって②、他の法規に優越し、
国民の基本権を定め③、国家権力を拘束する④」

現代は、近代の延長にあり、近代が生み出した問題点を、乗り越えることを目標にしている 。各種の国家目標の設定
例、平和主義、実質的平等、社会福祉・環境国家、基本権の第三者効力、憲法保障制度

前文「・・ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。
98条「この憲法は、国の最高法規であって、その条項に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない」
法治国家は、法規のピラミッドを前提としている。
⒓条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。基本的人権=人権=基本権
99条「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」
国家を構成するものの権力行使の根拠を、憲法が定め、権限行使の限界を明らかにする
1-1 日本国の最初の憲法である「大日本帝国憲法」(1889=明治22年)は、言葉の正確な意味で、「近代立憲主義」憲法の流れからは外れていた。

1で定義した内容から、明治憲法は、すべて異なっている。
そこで「外見的立憲主義」という名前が付けられている。
天皇主権 欽定憲法
独立命令(法律の根拠を持たない命令)、緊急事態法制
法律の留保にあった臣民の権利
55条「国務大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス」

2 日本国は、敗戦に伴って、新しい憲法をもって再出発することが必要であった。
「蘇生憲法」の誕生 「平和を愛する諸国民」の願い
1946年 日本国憲法 口語体
1946年 フランス第4共和政憲法
1948年 イタリア憲法
1949年 西ドイツ基本法、東ドイツ憲法

2-1 日本国憲法の制定者はだれか ?
植木枝盛      吉田松陰

民権思想  v. 国体護持の思想
↓         ↓
GHQ      憲法問題調査会(松本丞治)
↓           ↓
金森徳次郎、佐藤達夫 吉田茂 岸信介
↓           ↓
護憲連合     保守派、日本会議

3 戦後70年
1951年 サンフランシスコ講和条約 + 日米安保条約
1953年 憲法調査会の設置(岸信介)
1960年 新安保条約・地位協定
1963年 高柳賢三調査会会長 憲法改正不要
1970年 岸信介 自民党憲法調査会 「憲法改正要綱」
1978年 自主憲法期成議員同盟「憲法改正試案」
1994年 読売新聞 憲法改正案
2004年 9条の会発足
2012年 日本国憲法改正草案(自由民主党)

3-2 憲法無視の現政府 → 憲法の無意味化
国家秘密法
安保法制 限定的な集団自衛権を可能とした憲法解釈
スーダンPKO日報問題
野党が求めた臨時国会召集の無視(憲法53条)

4 憲法改正と法律の改正(制定)の差異
59条   国会法56条(議案の発議)
96条 → 国会法⒒章の2、6章の2 憲法改正手続法(平成19年)
96条
この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

憲法改正原案 → 各院の憲法審査会 → 憲法改正原案(衆議院100人以上、参議院50人以上)⇒ 両議院の賛成(両院の調整=両院協議会(国会法86条の2))
衆議院=465(310)、参議院248(165)
国民投票 → 国会の発議後60日から180日の間(広報活動、国民投票運動)
改正案件ごとに一人一票(18歳以上)

問題点 ; どこまでを一つの改正案とするのか
広報活動は、どこまで自由なのか、反対運動の保障
最低投票率を考慮しないこと、積極的棄権を考慮しないこと
学校教育と広報活動の関係

4-1
自民党憲法改正素案
自衛隊の憲法明記
教育環境整備条項
参議院合区解消条項
緊急事態及国会の会期延長
4-2 自衛隊加権論の意図

新9条の2(案)
前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

参考 自衛隊法
3条
自衛隊は、我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たるものとする。

改正後の変化
1 自衛隊違憲論の排除 → 自衛隊員募集を促進 世界7位の軍隊から?位へ
自衛隊員の感情を充たす
2 次なる改憲への足慣らし → 国際協力部隊としての自衛隊
武力行使3要件の緩和
9条2項の削除
自衛隊法の改正

まとめ
憲法の役割の普遍性 人権の普遍性
自由・ 平等・ 博愛
↓  ↓  ↓
安全 多様性 連帯

若い皆さまへの期待 18歳の自覚
憲法の役割を確認し、憲法を好きになってもらいたい。
「われわれは、自明の真理として、すべての人は平等に造られ、創造主によって、一定の奪い難い天賦の権利を付与され、そのなかに生命、自由および幸福の追求の含まれていることを信ずる」 アメリカ独立宣言(1776年)
「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」 日本国憲法13条

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