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2020-05-03

前原 清隆(元長崎総合科学大学・日本福祉大学教員)

憲法改正問題と私たちの責任

安倍首相は憲法改正を口にするとき「責任」ということばを使います。それとは違う意味で私も憲法改正問題に向き合うとき二重の意味で「責任」を自覚する必要があると考えます。「過去と未来に対する責任」です。ここでは9条改憲(自衛隊加憲を含む)について述べます。

まず「過去に対する責任」とは、「過去の内外の戦争犠牲者たちの声に耳をすませる」ということです。大江健三郎さんはそれをノーベル賞受賞記念講演でつぎのように語りました。

「不戦の誓いを日本国の憲法から取り外せば・・・なによりもまずわれわれは、アジアと広島、長崎の犠牲者たちを裏切ることになるのです。」

つぎに「未来に対する責任」とは、「生まれくる人々の願いに想像力を働かせる」ということです。これについては国際社会における初めての世代間責任の一般的宣言であるユネスコの「未来世代に対する現在世代の責任に関する宣言(Declaration on the Responsibilities of the Present Generations Towards Future Generations)」(1997年)第9条(!)「平和」を紹介するのが有意義と思います。

 第1項「現在世代は、平和、安全、国際法と人権と基本的自由の尊重のなかで共に生きることを自らと未来世代の双方が学ぶよう保証しなければならない。」

 第2項「現在世代は、未来世代に戦争の惨害を免れさせなければならない。この目的のため現在世代は、人道の原則に反する武力紛争その他すべてのかたちの侵略および武力行使の有害な帰結に未来世代をさらすことを回避しなければならない。」

 9条改憲の当否は、過去および未来に対する私たちの責任の自覚のもとに選択されなければならないでしょう。

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