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2023-05-01

もう一度、アベノイズムから「人権と平和の憲法」を取り戻そう!

根森 健(東亜大学大学院教授)

 前世紀からの流れを受けて希望とともに始まった21世紀。だが、その初めから、人為的な災厄:同時多発テロにリーマンショック、そしてあまりにアナクロなロシアによるウクライナ侵略戦争、加えて、国の内外で次々と起こる自然的な大地震や異常気象のもたらす豪雨大災害や森林大火災等々に、未だ終息とは言えない自然的で人為的なコロナ・パンデミックと、今のところお先真っ暗な状況になっている。経済だって、財政破綻爆弾を抱えている日本も、大恐慌の予兆を感じさせる世界経済も、実に先行き不透明だ。

 こんな不安な時代だから、都合の悪いことには耳をふさぎ、目を閉じ、口を塞いで、わかり合えない人は敵と見做し、判り会えそうな人だけを味方として、SNSやヴァーチャル空間に活路を求め日々を過ごしていこうとするのも判らないでもない。同様に、各国の指導者だって、またぞろ、敵と味方に分けて、恥ずかしげも無く、挑発的な覇権合戦を大っぴらにしだしているのだから。

 でも、敵と味方に分断し合う政治は、もう止めにした方が良い。こんな分断政治の中で犠牲になるのは、いつも、普通の人々だ。ウクライナのマリウポリでブチャで、そして、スーダンや世界各地で。

 安倍晋三という政治家が首相として、憲法尊重擁護義務(日本国憲法99条)にあからさまに背いて、壊し消し去ろうとした日本国憲法が目指しているのは、まさに今、現前で起こっているような「戦争の惨禍」から、自国民はもちろん、他国民も、要するに、「全世界の国民」が免れ、戦争や武力紛争等で殺されること無く、平和のうちに個人として尊重され生きる(生活する)ことだ。

 安倍氏が目指した政治(=人々や国々を敵と味方に峻別し、敵に対しては、対国家では、「積極的平和主義」という武力・戦力の行使による戦争・紛争の回避・解決、対国内では、敵対勢力と位置づけた集団・個人への介入と排除で対応し、統治の手法としては、国会の軽視・無視による、自由な内閣政治)を、いま、「アベノイズム」と名付けるなら、アベノイズムから、国民が自覚的に、「人権と平和の憲法」をもう一度取り戻すことが何よりも大切なのではないだろうか。

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