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2021-05-03

2021年5月3日の憲法記念日に寄せて

鈴木 眞澄(龍谷大学名誉教授)

毎年憲法記念日を迎えるたびに、私は、1947年5月3日という絶妙な「歴史のタイミング」に思いを馳せます。もし日本国憲法の施行があと3年遅れていたら、という思いです。あと3年遅れていたら、人類は、人類の理想を定めた憲法を、二度と手にすることはできなかったでしょう。3年後の1950年6月、わずかに対馬海峡で隔てられただけの朝鮮半島で、戦争が起こり、司令官だったダグラス・マッカーサーが原爆の使用を構想していたからです。然も同じく原爆使用論者のトルーマンでさえ、彼を解任せざるを得なかったほどの強力な構想でした。その結果が、あの「老兵は死なず。ただ消えゆくのみ」という議会演説につながります。
わずか3年という「歴史のタイミング」。歴史的な事件には、起こるべくして起こる背景がありますが、そうした背景は、事件の渦中ではなかなか見えにくいものです。そうだとしたら、人間は常に目の前で現実の起きている事態に向き合い、今できることを目一杯実行しておくことが大事なのだと思います。
さて、この2021年5月3日のこのときに、私たちがしておかなければならないことは沢山あります。コロナ禍は確かに未曽有の事態ですが、その背後で、日本国憲法改正の動きが確実に起きています。また、「学問の自由」に対する理由なき(理由の言えない)侵害(日本学術会議会員任命拒否)にも拘らず、それをすり替えようという、信じ難い動きも起きています。
今年の憲法記念日は、間違いなく、こうした後世に残るべき「歴史のタイミング」の中で迎えられています。こういう思いを皆さんと共有できることを望んでいます。

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