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2022-05-01

「今年の憲法記念日のもつ格別の意味」

小林 武(沖縄大学客員教授)

 今年の5月3日は、この日を現行日本国憲法を手にすることのできる最後の記念日とさせてはならない、との思いをもって迎えることになります。昨秋の総選挙による維新の議席増を突撃要因として、改憲の濁流が渦を巻いて国民代表議会を席巻し、今夏の参院選後の改憲発議が一気に現実味を帯びています。

 77年にもわたって、生きる人々の尊厳と人権そして平和にとって不可欠な存在であり続けてきた日本国憲法を変えるというのであれば、それにふさわしい道理と条理が不可欠です。しかし、今般の改憲の企てにおいては、主張者たちはそれを示すことなく、ただ力と喝采の中で主権者国民の賛同を掠め取ろうとしています。草の根のたたかいとなる国民投票でも、その帰趨はまったく予断を許しません。今こそ、憲法研究者には、道理と条理を構えた防波堤の役割を果たすことが人々から求められています。

 2月24日に開始されたロシアのウクライナ侵攻がつくりだした情勢は、日本の憲法政治にも深刻な影響を与えています。軍拡と軍事同盟強化、敵基地攻撃能力の保有、核兵器の共有までを含む、力による抑止論の噴出です。そこで言われている敵基地攻撃は、軍事中枢への先制攻撃を意味するもので、もはや全面戦争にほかなりません。今採るべきは、武力によらない対応による方途です 。9条は無用どころか、これを柱としてこそ、世界に平和を取り戻し、日本の安全も確保できます。そのためのたしかな構想を提示できるよう、研究者として尽力し、いかにしても憲法を守り抜きたいと思います。

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