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2021-05-03

沖縄の5 . 3とコロナ

小 林 武(沖縄大学客員教授)

COVID-19のパンデミックが宣言されて後、2度目の5.3である。憲法政治は、つまりは私たちは、大きな岐路に立っている。
 沖縄にとっては、コロナは、5.3の前に「4.28」があることを改めて思い出させた。1952年、沖縄を米国の統治下に置き続けることとした講和条約発効のこの日は、「屈辱の日」以外の何ものでもない。72年の施政権返還後も、安保体制が憲法を組み伏せている姿は、今日に至るまで変わらない。沖縄のコロナ感染者数は、人口比率において常時、東京・大阪に匹敵している。その背景要因の大きな一つに米軍基地の存在があるが、地位協定が壁となって、県は基地内に検疫・検査を及ぼすことができず、その感染状況は闇の中にある。憲法を奪われた沖縄の戦後は、今も続いているのである。
 コロナ蔓延のただ中、日本の首相の訪米を受けておこなわれた首脳会談は、「日米同盟」で中国と対峙する方針で合意し、台湾有事を共通の関心事項とすることまで確認したものであった。これによって、集団的自衛権行使を基軸にした安保法制の発動、つまりアメリカの軍事行動に随伴した日本自衛隊の武力行使の可能性がますます現実化した。沖縄など南西諸島への自衛隊配備・米軍共同使用の基地建設に、拍車がかかっている。
 コロナの危急の事態に、日本の公権力担当者は、人命保護絶対優先の姿勢、科学にもとづく合理的政策をもたないことを露呈した。人々は政府に信を寄せず、各自の懸命の努力によってこの危害を乗り切ろうとしている。権力側も、実のところ、国民の信託に依拠する統治の原則、つまり立憲主義にもとづく権威の獲得をもはや放棄し、権限だけを抜き身で行使しようとしているらしくみえる。――この行き着く先は何か。私たちが主権者としての力量を強め、こうした政府をとりかえてコロナ後の社会をつくる、そのような明日を考えたい。そして、やはり、憲法こそ未来を拓く力になるものであると、あらためて思う。

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