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2020-05-01

飯島 滋明(名古屋学院大学)

2020年5月3日の憲法記念日にあたって

 「政府と国会のすべての活動は、今では感染症との闘いに向けられなければなりません。昼夜を問わず、われわれがそれ以外のことに気を取られてはなりません」。2020年3月16日、フランスのマクロン大統領のテレビ演説の一部です。マクロン大統領が言うように、いま政治家たちが全力で取り組むべきはコロナ対策です。ところが安倍自公政権の対応はどうでしょうか? たとえば安倍政権はコロナ感染拡大のどさくさに紛れて、「検察官の定年延長」を可能にする法改正を進めようとしています。この法改正がなされれば、政治家たちの犯罪が裁かれなくなる可能性が高くなります。言語道断な検察官定年延長です。さらに自民党、日本維新の会、公明党の政治家たちは、コロナ対策を名目にした憲法改正を主張しています。「火事場泥棒改憲論」であり、言語道断です。いま、新型コロナウイルス感染の拡大で日本も大変な状況になっています。外出自粛、休業要請などで、多くの市民は経済的にも被害を受け、倒産・廃業や解雇、学校の退学などの事例が生じています。こうした状況への対応のために憲法改正は必要ありません。むしろ安倍内閣は「生命・自由・幸福追求権」(憲法13条)、「生存権」(25条1項)、「国は、……公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」とする憲法25条2項、「教育を受ける権利」(26条)、「財産権」(29条)などを根拠に迅速かつ適切に対応すべきです。安倍政権の対応は「後手後手」「思いつき」の対応であり、適切な対応とはお世辞にも言えません。自分たちのお粗末な政治を棚に上げて「憲法改正」をすすめようとすること自体、これらの政治家たちが市民のことを考えていない証拠です。

 また、安倍自公政権のもとでは「森友問題」「加計学園問題」「桜を見る会問題」等の疑念を払しょくするような説明を安倍首相がしておらず、公文書の改ざんや廃棄が蔓延しています。公文書の改ざんでは自殺者まで出ています。2020年3月18日、ドイツのメルケル首相は「開かれた民主主義のもとでは、政治において下される決定の透明性を確保し、説明を尽くすことが必要です」と発言しましたが、新型コロナ感染に関する安倍政権の説明でも「透明性」が確保されず、たとえば感染者数やアベノマスクに関しても市民は政府を信用できない状況です。説明責任を果たさず、公文書の改ざんや廃棄が蔓延している安倍政権のもとでの憲法改正は、決して国民のためになりません。そして憲法改正の国民投票には850億円もの費用がかかります。憲法改正に850億円もの費用をかけようとするより、生活補償、休業補償、家賃補償、学費等にそうした費用をかけるべきです。

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