toggle
2020-05-01

永山 茂樹(東海大学教員)

 緊急事態に通常の法を停止し、集権的な方法で政治的決定をおこなう。また自由や権利を停止させる。この権力を「国家緊急権」といいます。政府は改正特措法にもとづき、法律上の国家緊急権を行使しました。さらに改憲によって、憲法上の国家緊急権の創設をねらっています。
 しかし国家緊急権は濫用されます。アクトンのことばをかりれば、絶対的権力者は国家緊急権を絶対に濫用するのです。
 濫用は四つの場面でおきます。第一に、緊急事態の認定において。第二に、緊急事態を理由とした民主主義と人権の制限において。第三に、緊急事態を終了させないことにおいて。さいごに、国家緊急権の発動・行使・継続を批判する声を敵視することにおいて。ですから、権力者にたいする懐疑心が、いつも以上に重要になっています。
 まったくあたらしい課題がでてきました。それは、距離を保ちながらの民主主義、距離を保ちながらの自由と権利の保障、です。国家緊急権の濫用に対抗するために、この二つのむずかしい課題を解かなければなりません。一緒に知恵をしぼっていきましょう。

関連記事