2025-05-02
戦後80年、憲法を護る大切さ
植野妙実子(中央大学名誉教授)
戦後80年。なんとかこの憲法を護ってこれた。危機はたくさんあったけど。また実質的に護られていないと思える条文もあるけれど。
日本国憲法には重要な条文がたくさんある。13条の個人の尊重も重要だし、これに基づく14条1項の法の下の平等も重要だ。何よりも今、前文に書かれている、平和的生存権の意義は大きい。しかし残念なのは、憲法研究者の、より良い社会を創ろうとするための多くの指摘が無視されていることである。
私は、1990年代後半にフランス等への訪問調査を経て、2001年に『21世紀の女性政策』(編著、中央大学出版部)という本をまとめ、専業主婦の保護政策が間違っていることを指摘した。にもかかわらず、相変わらずその保護政策は続いており、しかも103万円の壁を引き上げようという動きにもなっている。根本的に夫婦における扶養控除をなくし、累進課税に移行すべきである。当時の調査で耳に残っている言葉は、助けるべき人は助けるべきである、しかし働くことができない事情のある人は別として、働ける人は働くのが当然である、というフランスのNGOの人の言葉である。日本の根強い男女の役割分担の意識は依然としてあり、格差社会になった今日、地方においては再び、女性を大学には行かせない、浪人はさせないという話を聞くと悲しくなる。さらに家族は「一体」という考えがいまだにある。家族においても家族それぞれの個人の尊重が大切であり、平等が原則である。
憲法の条文を字面だけでなく、真に根付かせる。それが80年を過ぎた、これからの時代の課題である。
タグ: 憲法記念日メッセージ
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