厳しさの中で「連帯」を模索する少女に出会って
清末愛砂(室蘭工業大学大学院教授)
4月末からアフガニスタンを訪問しています。憲法記念日に向けて、首都カーブルで目にした一枚の絵について紹介したいと思いました。2021年8月以降、ターリバーンの復権下にあるアフガニスタンでは、女子は基本的に6年生までしか学校教育を受けることができません。6年生になると、「あと一年」「あと何ヶ月」「あと何日」と通学が認められる期間をカウントする少女たちがいます。そうした状況の中で、現地の女性団体等が弾圧と隣り合わせにありながらも、「秘密の学校」(地下学校)を開校する等して、なんとか教育を受ける機会を少女たちに提供しようとしてきました。なかには、絵画を学ぶコースを開講しているNGOもあります。
先日、絵画コースで学んでいる少女たちが描いた作品を見る機会がありました。多くの少女たちは、絵を通して教育の機会を奪われた自らの悲しみや苦しみ、怒りなどを表現しています。教育の機会だけでなく、表現の自由が大幅に制限されている中で、自分の胸の中に渦巻く感情を絵として表すことで、その不当性とこのような状況に抗する自らの存在を証として残そうとしているのです。
コースに参加する10代の少女たちの作品を見ているときに、イスラエルによる過酷極まりない攻撃にさらされてきたガザを題材とした作品が目に入ってきました。瓦礫に囲まれながらも残っている建物に掲げられているたくさんのパレスチナの旗。私はこの作品からしばらく目を離すことができませんでした。自らも苦境の最中にありながら、「民族浄化」を目指しているとしか思えないような攻撃を受けているガザの人々の存在を明示しようとする少女に圧倒されたからです。この少女は、ガザをモチーフにすることで、ガザの人々が置かれている地獄と自らの苦境を重ね合わせ、国境を超えた連帯を表したのです。
表現の自由がどれほど侵害されようとも、それを奪い返すための表現活動を続け、さらには国際連帯を表明する。私は少女の姿と作品を見ながら、この気高さの中に、人権を求める闘いのためのツールとなる表現の自由の尊さの意味がち強く込められているのだと思わずにはいられませんでした。