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2025-05-02

平和の種を蒔き続けて

二瓶由美子(元桜の聖母短期大学教授)

 地方のカトリック女子短大に勤務した日々に力を入れていたのは、自立した女性の育成でした。建学の精神が「社会を変革する女性の育成」であることに共感し、共通教育を通して様々な実践をしました。憲法や法学の授業では、人権について深めました。死刑制度に関するシンポジウムでは、積極的な意見交換がなされ、取材に来ていたテレビ局が、ニュースで8分間もその様子を伝えました。知る、考える、伝える、学生たちの成長は想像以上でした。


 学生たちの共感力を実感する経験は、「国際平和論」の沖縄研修に顕著でした。平和ガイドによる連日のハードな見学と講話は、安穏な日常に疑問を持たずに成長してきた学生たちの目を開かせました。毎年、「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」共同代表である高里鈴代さんに講話をお願いしていましたが、日中の見学で疲れているはずの学生たちは、誰ひとり居眠りもせず、質問も多く、沖縄の女性たちの不安や苦悩に涙を浮かべていました。まだ辺野古の海岸に「命を守る団結小屋」があった頃、そこに常駐する「おじい」が、学生たちの訪問を喜び、「みなさんのような若者が、この海を守りたいと言ってくれて嬉しい」と感謝の気持ちを伝えてくれたとき、自分にも存在する価値があるのだと泣いた学生がいました。沖縄の困難を、他人事ではなく、自分が向き合う課題だと認識し、平和や環境を守ることを生きる目標にしたのです。


 今は母となった卒業生も多数います。時を経ても、何も変わらない沖縄の困難を報道で知った彼女たちのなかには、フラワーデモやフェミブリッジに協力を惜しまない者もいて、そこに確かに「平和の種」が芽を出していることを実感します。 


 戦争は暴力と欠乏そのものです。軍隊という暴力装置が沖縄の性暴力を生むのです。基地が偏在する沖縄が私たちに伝えてきた教訓を忘れてはならないと、改めて思います。平和憲法の掲げる理想を貫き通し、あらゆる暴力から命と尊厳を守っていくために、平和の種を蒔き続けます。 

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