toggle
2022-05-01

憲法改正にむけて開催される衆議院憲法審査会

飯島 滋明(名古屋学院大学)

  いま、メディアでは「敵基地攻撃能力の保有」「5年間での防衛予算の倍増(GDP 比2%超)」などの自民党の動きが紹介されています。一方、「憲法改正」の動きはそれほど報じられてはいません。ただ、実は憲法改正むけた政治は着々と、そして静かに進められています。

 通常、予算委員会が開催されている間、憲法審査会は開催されないのが慣行でした。ところが2022年2月10日、こうした慣行が破られ、自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の改憲4政党の意向で衆議院では憲法審査会が開催されました。

 その後、3月10日を除き、衆議院では毎週木曜日に憲法審査会が開催されてきました。

 2022年4月28日の衆議院憲法審査会で自民党の新藤義孝与党筆頭幹事は「毎週安定的に開催」と発言していましたが、ほぼ毎週の憲法審査会の開催は、憲法改正にむけた「実績づくり」となります。

 2022年3月や4月、衆議院の憲法審査会では、「国会議員の任期延長」の憲法改正論議について自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党の改憲4政党の主張はほぼ一致しています。

 緊急事態条項についても自民党、日本維新の会、国民民主党は、緊急事態の対象として①戦争、②内乱・テロ、③自然災害、④感染症の拡大等、効果として①人権制約も含む緊急政令の発令、②財政処分を可能にする憲法改正を主張しています。

 このように、衆議院の憲法審査会では「国会議員の任期延長」や「緊急事態条項」について、改憲4政党で意見のすり合わせがなされています。

 自民党は参議院選挙前までは、全面的な憲法改正の動きを控えています。

 ただ、参議院選挙後、衆議院でほぼ毎回憲法審査会が開催されてきたことを「実績」として、改憲4政党が「十分な議論をしてきた」「議論は尽きた」と主張し、憲法改正国民投票に持ち込む可能性があります。

 2021年6月、公職選挙法の7つの項目に合わせた改憲手続法(憲法改正国民投票法)が改正されました。この改正は改憲4政党が十分な議論もしないで国会での数の力で成立させたものです。

 2022年3月3日、衆議院憲法審査会では憲法56条1項の「出席」に関して、オンライン出席が認められるとの「とりまとめ」をしたうえで、それを衆議院議長に提出しました。

 この「とりまとめ」に関しては3月16日、憲法研究者有志82名が批判する声明を出しました。憲法研究者の批判にあるように、この「とりまとめ」も十分な議論がなされたわけではありません。

 さらに4月27日、自民、公明、日本維新の会の各党などは公選法並び3項目の改正改憲手続法案(憲法改正国民投票法)を国会に提出し、翌28日には衆議院憲法審査会で法案の趣旨説明がされました。この趣旨説明は、立憲民主党が反対する中で強行されました。「私たちは 、あとやるべきは 、公選法の積み残しの三項目 、 これをしっかりと、直ちに公選法並びの国民投票法改正をすれば 、まさにいつでも十分な憲法改正の国民投票ができるという立場であります」(2022年4月14日衆憲法審査会日本維新の会足立康史議員発言)という立場からすれば、公選法並び3項目の改正改憲手続法が成立すれば、いつでも憲法改正国民投票が可能とされる可能性が高まります。

 こうして2月10日以降、衆議院でほぼ毎回憲法審査会が開催されてきたことが「実績」とされ、参議院選挙後、改憲4政党が「十分な議論をしてきた」「議論は尽きた」と主張し、憲法改正国民投票に持ち込む可能性があります。いま、「静かなる憲法改正の動き」が進んでいることに警戒が必要です。

 参議院選挙の結果次第、具体的には自民党、公明党、日本維新の会、国民民主党などの改憲4政党が国会の議席の3分の2以上を占める事態となれば、憲法改正が現実味を帯びます。参議院選が終われば2025年まで、場合によっては3年間、国政選挙がない可能性があります。こうしたことも考えた上で、まずは2022年の参議院選挙で私たちは主権者として適切に判断することが必要になります。

関連記事