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2019-01-29

「辺野古新基地建設反対憲法研究者声明」の記者会見(2019.1.24)参加者の発言メモ by 飯島滋明

 記者会見コメント                  2019年1月24日

飯島 滋明(名古屋学院大学)

1 地方自治の役割

 大日本国憲法には「地方自治」に関する規定はありませんでした。そして府県知事は勅令の官吏であったり、市町村が条例を議決しても国の監督機関である府県知事の許可が必要となるなど、地方公共団体は中央政府の指揮・監督下におかれました。地方公共団体は中央政府の意向を隅々まで浸透させるための組織でした。 

 一方、日本国憲法では憲法の基本原理である「基本的人権の尊重」「民主主義」「平和主義」の実現のために不可欠であるため、第8章で「地方自治」が設けられました。憲法では「平和主義」が基本原理とされていますが、「平和主義」実現のためにも「地方自治」は極めて重要です。

 たとえば敗戦までの日本では、国が港湾管理権を独占していました。そのために国の戦争遂行が容易になり、さまざまな港から軍艦が出ていくことが可能になりました。しかし1950年の「港湾法」では、「港湾管理権」が自治体とされています(2条)。「港湾法」で港湾管理者が自治体とされているのも、国による戦争遂行を阻止、阻止する役割を果たします。その代表例が、核兵器を搭載しないことを証明しない限り外国軍艦の入港を認めない「非核神戸方式」(1975年)です。「非核神戸方式以降」、アメリカ軍艦は神戸港には入港していません。「公有水面埋立法」でも、埋立の免許を出す権限が「都道府県知事」とされることで、戦争遂行や戦争遂行体制の構築につながる基地建設などの国の施策を認めないことが可能になります。

2 「民主主義」「法の支配」を守らない安倍自公政権と辺野古新基地建設

 ところが第2次以降の安倍自公政権は、たとえば「秘密保護法制定」「集団的自衛権行使容認の閣議決定」「第3次日米ガイドライン締結」「安保法制制定」「共謀罪制定」など、民意に反する法律などを強行的に採決し、「戦争できる国づくり」を進めてきました。「辺野古新基地建設」も安倍自公政権による「戦争できる国づくり」の一環です。トーマス・キングという普天間基地の副司令官で、普天間基地を辺野古にうつす委員会のメンバーがかつて、辺野古に作る基地は普天間の代わりじゃなくて、軍事力を20%強化した基地を作ると言っています。普天間基地では米軍のヘリ部隊がイラクやアフガニスタンに出撃するときに爆弾を積めず、嘉手納基地で積んでいる、だから普天間基地を辺野古に移したら、陸からも海からも自由に爆弾を積める施設を作ると述べています。「普天間基地の危険性の除去」「抑止力の維持」などと安倍自公政権は主張して「辺野古新基地建設」を強行していますが、トーマス・キング氏の発言のように、辺野古新基地建設は在日米軍の「出撃拠点基地」「後方支援基地」「軍事訓練基地」としての機能が一層強化されることになります。在日米軍は日本を守るとの主張がなされることもあります。しかし「日本を守るために米軍が日本に駐留しているわけではない」(1982年4月21日米上院でのワインバーガー国防長官)のように、アメリカ軍は日本を守るために日本に駐留しているわけでないとたびたび発言していること、「他国の善意を信じるほど愚かなことはない」というジョージ・ワシントン大統領の発言を常に念頭に置く必要があります。

 そして辺野古新基地建設に反対する市民の活動が活発に行われていますが、そうした市民に対して警察は暴力をふるったり、「土人」発言に象徴されるような「暴言」を繰り返しています。警察官の市民への暴力は、人権を尊重しつつ刑事手続を進めるべきという「適正手続の保障」(憲法31条)、「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁止する」(憲法36条)に違反します。警察官による「土人」「ブタを確保」「ババア」などの発言も「個人の尊厳」(憲法13条)を侵害する行為です。先ほど地方自治の重要性を紹介しましたが、安倍自公政権が行ってきた「辺野古新基地建設」の強行は、選挙でたびたび示された民意を無視し、「公有水面埋立法」や「行政不服審査法」違反の行為とも相まって「地方自治」を侵害するのもです。「秘密保護法制定」「集団的自衛権行使容認の閣議決定」「第3次日米ガイドライン締結」「安保法制制定」「共謀罪制定」など、安倍自公政権下での民意に反する政治、そして憲法違反の行為は目に余りますが、「辺野古新基地建設」で安倍自公政権が行っている憲法違反行為はそうした違憲行為の中でも常軌を逸しています。安倍自公政権が沖縄で行っているのはまさに「法の支配」の蹂躙であり、中国などに対して「法の支配を遵守せよ」などと主張する資格はありません。憲法研究者としては決して看過できないことを断言します。

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