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2017-12-05

そもそも憲法、どこでも憲法 大学で公開講座、100人超す研究者が出前講座

2017年12月5日の朝日新聞夕刊で、木村司記者によって、以下のように「市民と語る・どこでも憲法・第1回憲法講座」が報道されました。

  http://digital.asahi.com/articles/DA3S13260695.html?rm=150

憲法とはそもそも何なのか。いま考えるべきことは何か。素朴な疑問から根源的な問いまで、専門家を交えて、憲法改正論議を考える取り組みが始まっている。自由な議論が奪われていないか。憲法の本来の意味が忘れられていないか。そんな危機感もにじむ。

 横浜市戸塚区の明治学院大で11月半ばに始まった計5回の公開セミナー「憲法が変わる(かもしれない)社会」。同大教授で作家の高橋源一郎さんが、学者やキャスターらをゲスト講師に迎え、対談するスタイルが好評で毎回、550人収容の教室が満席状態だ。3回目の28日は急きょ、別教室でもモニター中継した。

 「憲法問題は、専門家と我々素人に大きな隔たりがありちょっと悲しい。専門家ではない我々はどうすれば」「憲法ちょっとよくわからないな、という方がいても全く不思議ではない」。対談では、高橋さんがわかりやすい言葉で問いを投げかけ、ゲストからは憲法の意外な姿が語られる。

 「近代日本の右翼思想」の著書がある政治学者・片山杜秀さんは、明治憲法の時代について問われ、「大正デモクラシーも、総動員体制もあった。明治憲法も時代に応じてどんどん解釈は変わった」と説いた。高橋さんは「改正しなくても意味が変わってくる可能性がある。今の憲法も明治憲法も。改正してもどうせ解釈するんでしょ、とも思いますね」と応じた。

 ■「もっと自由に議論はできる」

 憲法学者の石川健治・東大教授は、憲法9条を巡る議論について「条文に書かれていることだけでなく、書かれていないことも含め、どういうメカニズムが働いてきたのか、条文を変えることがどういう作用をもたらすのか、ということを考えないといけない」と解説した。高橋さんは「憲法を考えるとき、条文のみでは近視眼的になってしまう。条文以外に様々な要素があって一つの法の動きになる。分析は難しいが、それを考えるのが憲法論」と引き取った。

 セミナーには、改憲か護憲かといった二者択一に縛られがちな議論から、いったん抜け出したいとの狙いもある。高橋さんは言う。「もっと自由に論議できるはずなのに、『考える自由』が奪われている。それは、憲法が変わることよりも重大なことかもしれません」「最初から結論があるのではなく、本当に必要な知識を聞きたい。憲法に関する問題を最もよく考えている方をお迎えし、自分で考えるヒントを持ち帰ってほしい」

 ■「世論と政治家、ギャップ危険」

 一方、改憲の是非以前に、憲法をないがしろにした政治が行われているとの危機感から、全国の研究者100人余りで10月に発足した「憲法研究者と市民のネットワーク」(憲法ネット103)は出前講座「市民と語る どこでも憲法」をスタートさせた。

 第1回は11月27日夜、東京都文京区の中央大後楽園キャンパスに約30人が集まった。講師役の植野妙実子(まみこ)・中央大教授は、衆院議員の8割が改憲に賛成する一方、首相に一番力を入れてほしい政策を聞いた世論調査では、社会保障が最も高い3割強だったという結果に触れた。「改正したいという思いが、市民の中で熟しているのであれば改正も納得できるが、権力の側から出てきている。世論と政治家の考えにギャップがある状況は危険」と問題提起。権力を縛るという憲法の意義を改めて確認する必要性を説いた。

 憲法を議論する場を友人と作ろうと考えている大学4年の安斎拓真さん(22)は、現政権が改憲案を次から次へと変えることに不信感があるという。講座を聴き、「改憲案への批判一つとっても、憲法学者によって理由は様々。刺激になった。もっと学んでいきたい」と話した。

 憲法ネット103には初めて市民運動に参加する研究者も少なくないという。ホームページなどで市民からの要望を受け付け、全国各地の研究者がそれぞれの地域で講座を開いていく考えだ。フェイスブックや、ホームページ(https://www.kenponet103.com/)で情報発信している。(木村司)

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