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2017-11-30

憲法の質問 憲法第95条特別法の住民投票について

「市民のみなさんから」
市民の皆さんから、送っていただいた、憲法・憲法問題についてのいろいろな意見・提言・問題提起などの「声」をお届けするコーナーです。
私たち憲法研究者から、市民のみなさんからのいろいろな「声」への応答です。
応答できないことも多いかもしれませんが、大事に受け止めています。みなさまの「声」をお待ちしています。

 

中山茂さんからの質問(2017.11.28)
昨日の第1回憲法講座の参加者です。お疲れ様でした。標記の件で質問します。小生千葉県成田市の住民です。成田市が国際医療福祉大学を誘致するに当たり、住民投票を掛けずに、京成電鉄から土地を購入し、無償で大学に提供した行為は、憲法95条に抵触すると考えますが、いかがでしょうか。また家計学園とまったく同様に、校舎建設費の半分を助成した行為も、違憲と思います。なおかつ国家戦略特区に指定された事を理由に、またしても、医学部用地無償貸与、建設の半分負担、さらに病院用地も無償貸与と、成田市はやりたい放題で税金を使っております。尚、成田市長を相手取って、住民訴訟を起こしています。

大津浩さん(明治大学教授)からのお答え(2017.11.30)

 お問い合わせについては、通説・判例ともに憲法95条の定める地方自治特別法には該当しないと考えます。そもそも成田市を対象とする特別法が制定されたわけではありませんし、地方自治特別法は特定の自治体の権限や制度を特別に扱う(多数説は差別的に扱う)ものを言うのであって、特定地域の住民を不利に扱う効果を持つにすぎない立法や一般法の個別的執行として(国家戦略特区も同様)特定自治体が特別扱いされる効果を生む場合も、憲法95条違反の問題にはなりません。この点については、憲法学者の間でほぼ共通の理解であると思いますが、一般の方々は納得されないと思われます。
今回の自治体の財務行為が違法ないし過度に公益を害する旨を主張して住民訴訟に訴えるか、住民投票(条例制定)を求める住民発案の手段が一般的だと思います。

稲正樹のコメント:憲法研究者の回答は上記のようにならざるを得ませんが、憲法にもとづく充実した地方自治のあり方を考えていきたいです。国家戦略特区にもメスを入れなければなりませんね。

 

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